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とある星の力を使いし者
第177話
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アンドテイクだ。
 無償で相手を助けるのは勇ましいが、その理念に溺死しないように注意しろ。
 摩耗して絶望するぞ。」

「何にだよ。」

「自分にだ。」

目を伏せながら語る麻生の言葉は、どことなく重みを感じた。
この話題はこれで終わり、と暗示させるかのように話題を変える。

「飛行機はどこだ?」

「国際空港行きのバスに乗る。
 そこに親船が用意してくれた飛行機がある。」

「パスポートは必要ないのか?」

「馬鹿かお前は。」

その言葉に上条はむっ、と眉を寄せ、麻生は言葉を続ける。

「俺達は旅行しに行く訳じゃない。
 統括理事会の一人である親船すら秘密裏に行動したんだ。
 これがばれたら国際的非難どころの騒ぎじゃない。
 最悪、学園都市の。」

「ストップだ、キョウやん。」

有無の言わせない威圧感の籠った声で土御門は麻生の言葉を遮る。
それを聞いた麻生はそうだったな、と言葉をこぼし納得して。

「ともかく、パスポートの一つや二つ気にするな。」

「ちょっと待て。
 さっき言いかけたのは何だよ。
 学園都市の、の続き。」

「バスが来たぜい。
 さっさと向かうぞ。」

上条の問い掛けに二人は耳を傾けず、バスに乗り込む。
納得のいかない表情を浮かべ、どこか置いてけぼり感を感じながら、上条も後に続く。
学園都市の闇。
そんな言葉を聞いたら、上条は誰の静止も聞かずに動き出すに決まっている。
上条を巻き込ませるわけにはいかないと思った土御門は、麻生の言葉を遮ったのだ。
当然、遮った意味を理解した麻生もそれ以上の事を口にはしなかった。
第二三学区は基本的に徒歩の移動ではなく、規定のバスを利用する事になる。
滑走路だらけで建物のない第二三学区は、とにかく道がまっすぐだ。
速度制限もかなり甘いらしく、道路標識は時速一〇〇キロまでオーケーと書かれている。
その地平線の向こうから、入道雲のような白い水蒸気が噴き上がるのが見えた。
地響きに似た低い音が、震動となってガラスをビリビリと震わせる。
麻生は顎を手で支えながら、窓の外を漠然と見つめながら隣にいる土御門と上条の会話の内容が耳に入る。
どうやら震わせた原因はたった今、ロケットが発射されたらしい。
それからインデックスを家に置いてきてしまったなど、どうでもいい話だったので話に入る事なく、滑走路と航空機しか見えない退屈な風景を見続けた。

「ところで、俺達はどこへ行くんだ?」

「フランス。」

「ヨーロッパか、また遠いな。
 飛行機の往復だけで、一〇時間くらい持っていかれそうだな。」

「いや、一時間ちょっとで着くにゃー。」

「は?」

いきなりの謎の発言に、上条は思わず聞き返した。

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