第一幕その八
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第一幕その八
「私のか?」
シモンはその言葉に顔を顰めた。
「そうですよ、ご自身で命令したというのに!」
ガブリエレは手を掴んでいる群衆から離れ彼を指差して叫んだ。
「何!」
それを聞いてシモンもその場にいる議員や群集達も思わず驚きの声をあげた。
「嘘をつけ、総督がその様な事を為されるか!」
群集の一人が叫んだ。
「そうだ、こいつは自分の罪を総督になすりつけろうとしているんだ!」
パオロが咄嗟に叫んだ。この際全ての嫌疑をガブリエレに被せて消してしまおうと考えたのだ。
「信じないか、だが私の潔白は神が御覧になっている!」
そう言うと腰の剣を引き抜いた。
「覚悟しろ、シモン=ボッカネグラ!」
そう言うとシモンに跳びかかろうとする。だがそれは出来なかった。
「見ろ、人殺しがまた剣を抜いたぞ、今度は総督を殺す為にな!」
パオロは群集を煽る様に叫んだ。
「そうはさせるか!」
群集がガブリエレに逆に跳びかかる。
「クッ、何をする!」
彼はそれを必死に振り払おうとする。だがそれは出来なかった。多勢に無勢で取り押さえられた。
「おのれっ、ここまで来て!」
取り押さえられながらシモンを決死の形相で睨み付ける。パオロとピエトロはそれを見てにんまりと笑った。シモンは身じろぎもせず彼を見ている。
「さっさと処刑場へ連れて行け!」
パオロが叫んだ。しかしその時だった。
「待って下さい!」
会議室に誰かが入って来た。アメーリアである。それを見たパオロとピエトロの顔が真っ青になった。
「アメーリア・・・・・・」
ガブリエレが彼女の姿を認めてその名を呼んだ。彼女はシモンとガブリエレの間に割って入る。そして恋人を庇う形で言った。
「彼の言った事は本当です。彼は私を助けようとしただけです」
「本当か!?」
群集も議員達も彼女の言葉に耳を傾ける。パオロとピエトロは群集の中にコソコソと隠れる。
「ですから総督・・・・・・」
シモンを見る。娘として。
「彼を助けて下さい」
懇願した。シモンはそれを黙って聞いていた。
「・・・・・・・・・」
チラリとガブリエレを見る。まだ自分を睨んでいる。だが取り押さえられ剣も奪われている。
「手荒な真似はするな」
彼を取り押さえている群集達に対して言った。
「もう害は無い。そこまでする事もあるまい」
群集達はそれに従った。ガブリエレは縛られたがそれだけに留まった。
「ではアメーリア」
シモンはそれを見届けるとアメーリアに顔を向けて問うた。
「では事情を話してはくれないか。そのさらわれそうになった経緯を」
「はい」
アメーリアはシモンに一礼して口を開いた。
「あれは心地良い夕方のことでした」
パオロとピエトロはそれを聞
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ