第四十一話 鍛えた結果その七
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「つまりは」
「まあな。がちがちになったらかえって危ないしな」
「身体も心もほぐさないとな」
「やっぱり怪我するからな」
「それが一番怖いからな」
「ほら、あれだよ」
ここで一人が言った。その言うこととは。
「身体が硬くなったら本来の実力発揮できないだろ」
「うん、どうしてもね」
「緊張するのはいいことだよ」
気を抜かない、それはだというのだ。
「けれどな。がちがちになったらな」
「かえって駄目だね」
「剣道なんか特にそうだろ」
「特にって訳じゃないにしてもね」
「やっぱりよくないよな」
「うん、怪我とかの元だよね」
「そうじゃなくても負けるからな」
負けると言う言葉を聞いた。するとだ。
上城の顔は急に曇った。それでこう言ったのだった。
「負ければそれで」
「終わりだよな」
「剣道って二本取られたら負けだろ」
「ううん、一太刀だよ」
戦いのことからだ。今の彼は言った。
「それで終わりだよ」
「一太刀?」
「一太刀っていうのかよ」
「うん、それで終わりだから」
こう曇った顔で言うのだった。
「だからね」
「おいおい、一本勝負かよ」
「こりゃまた厳しいな」
「何か凄くないか?」
周りの誰もそれが戦いのことだとは知らない。それで彼等は笑ってこう言ったのだった。
「剣道部って厳しいな」
「真剣勝負なんだな」
「あっ、先生はそんなこと言わないからね」
「そうなんだ。あの先生は」
「そうしたこと言わないのかよ」
「基礎トレーニング重視派でね」
特に走ること、それが顧問の先生の言う練習のメインだった。
「そこまでは言わないよ」
「そうなのか。御前だけか」
「御前の考えなんだな」
「うん。剣道ってやっぱり」
剣士の戦いをそう呼んでの言葉だった。
「あれじゃない。生きるか死ぬか」
「おいおい、宮本武蔵かよ」
「それかよ」
「武蔵じゃないにしてもね」
それでもだというのだ。
「やっぱり刀を持ったらね」
「生きるか死ぬか、か」
「剣道ってそうなんだな」
「刀を持てば」
この言葉も周りから聞けば竹刀だった。竹刀にしても使い方によっては凶悪な凶器になるにしても彼等は安全なものと捉えていた。
だが上城は刀、剣と考えて言うのだった。
「それだけでね」
「生死をかけてかよ」
「戦うんだな」
「うん、そう思うよ」
上城は剣士として語る。
「だからリラックスもして気を抜かないで」
「ああ、頑張れよ」
「鍛えていけよ」
「そうするね。じゃあ」
こうした話をしながら自分達の番を待ちそうしてだ。
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