第二十四話 難波その六
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「特に面白いのは猿飛佐助でね」
「あの忍者の?」
彩夏はこの名前を聞いてこう言った。
「真田十勇士の」
「そう、その人のね」
「実在人物じゃなかったわよね、あの人」
「モデルになった人はいるけれどね」
他の十勇士の面々と同じだ。佐助にしても実在はしていないがモデルになった者はいるのだ。そうした意味で十勇士は実在していた。
「それでも実際のそうした人はね」
「いなかったのね」
「あくまで空想上の人なの」
十勇士自体がである。
「その人を書いた作品だけれど」
「忍者ものも書いてたのね」
景子は彼の写真を見てまた言う。
「そうなのね」
「純文学っていって色々でね」
里香もさらに言う。
「書く人にもよって」
「それで忍者ものとかも」
「他にもそうした作品があるの、というかね」
「というかって?」
「純文学ってこだわるとかえってよくないから」
塾の後に話したことがまた話される。
「夫婦善哉も人情ものなの」
「大阪の、なのね」
「出て来る人はそのまま大阪の人だから」
今度は琴乃に話す里香だった。
「そう思ってね。読む時は」
「ううん、あとこのカレーって」
琴乃は里香の言葉に頷きながらカレーを食べつつ今度はそのカレーのことを四人に対して唸る様に述べた。
「懐かしい感じがする味ね」
「古いお店だよな」
美優もカレーを食べている、そのうえで言ったのである。
「だよな」
「戦前からあるのよね」
彩夏は里香に問うた。彼女も他の四人もカレーの上にソースをかけて卵と一緒にかき混ぜてそのうえで食べている。
そのカレーを食べつつこう言ったのである。
「そうよね」
「そうなの、いずも屋もそうだけれど」
鰻のその店もだというのだ。
「戦前からのお店だから」
「夫婦善哉もよね」
「そうよ」
本当に織田作之助の生前からの店だというのだ。
「その頃の味がね」
「まだ生きてるのね、難波には」
「そう思うとね」
里香はそのカレーを食べて笑顔で言った。
「私もこのカレーがね」
「美味しいのね」
「ええ、前から知ってたけれど」
その味をだというのだ。
「違うわ」
「そうよね、じゃあ後は」
カレーを食べた後はと、琴乃は言う。
「たこ焼きね」
「そう、次はね」
「楽しみね。美味しいから」
それでだとも言うのだった。
「何か幾らでも食べられそうなカレーね」
「名物カレー何杯食べようか」
彩夏は壁の桂三枝の字を見ている。
「その通りね。けれどここは堪えて」
「次はたこ焼きだよな」
美優はこのことをここで言った。
「それだよな」
「たこ焼きもいいわよね」
琴乃はたこ焼きについて考えるとそれだけで目を細めさせた。
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