第二十四話 難波その五
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「飾るものじゃないわよね、どれも」
「それもあるからね」
大阪、特に難波独特の飾らない風潮もあった。
「もう大蒜入れて食べてもね」
「いいのね」
「そうなるのね」
「そう、今日はもう飾らないで」
笑顔でまた言う里香だった、彩夏と景子に対しても。
「それでいこうって思ってるから」
「その方がいいかもね。五人だし」
琴乃もその大蒜を入れたラーメンを楽しむ。
「というかこれで男の子が声かけてきたら」
「逆にびっくりだよな」
「j本当にね」
琴乃は笑って美優にも言う、そしてだった。
まずはそのラーメンにラーメンと同じだけ大蒜が強い蓬莱の餃子と後は豚饅も食べてそうしてだった。今度はカレーだった、金龍ラーメン、蓬莱と歩いて少しの距離にある自由軒に入った、そこで大きなテーブルに座ってだった。
今度はカレーだ、そのカレーは。
「これよね」
「最初から御飯とルーを一緒に混ぜてあってね」
「まぶしてるっていうのね」
「その上に卵も置いて」
「ここにソースかけて食べるんだよな」
「これがいいのよね」
笑顔で話し実際にそのまぶしてあり卵を乗せているカレーにだった。
ソースをかけてかき混ぜる、それから食べる。
独特の甘口になる味だ、そのカレーを食べて言う美優だった。
「名物カレーっていいよな」
「このカレーを織田作之助が食べてたの」
里香が話す、彼女は店の壁にかけられている若い男が何かを書いている写真を見ていた、黒く髪の長い男だ。
その男を見てこう四人に言ったのである。
「あの人がなの」
「織田作之助」
「あの人が」
「戦争中か終戦直後かしら」
里香はその写真を見ながら話していく。
「その頃の写真だと思うけれど」
「このお店でカレー食べてたのね」
「自由軒で」
「そうなの」
「そう、他にもね」
見れば桂三枝やかつて首相だった羽田孜のサインや写真もある。
「色々な人が出入りしてきたの」
「そうみたいね、本当に」
「このお店は」
「吉本の人も出入りしているのね」
「そのグランド花月が近いからね」
里香はまた話した。
「だからなの」
「ああ、そうだよな」
美優は里香のその言葉に頷いた。
「だからだよな」
「そうなの、吉本の人も出入りしてるから」
これは他の店もである。
「今はいないけれどね」
「まあ運がよかったらだよな」
「他のお店もね。それでだけれど」
里香は織田作之助の写真を見ながらまた言う。
「織田作之助はね」
「その人よね」
「純文学では結構異端かも知れないけれど」
こう前置きして琴乃達に話す。
「面白い大衆娯楽的な作品も書いてるの」
「大衆娯楽?」
「そうなの」
そうした作品も書いてきたというのだ。
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