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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
血色の少年
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な声で。
視界の端で、紅衣の少年が驚いたように身じろぎしたが、意味は解からない。
「あ、いや、これは…………」
少年は焦った様子でピクシーを両手で包み込むと、引き攣った笑いを浮かべた。リーファはその手の中を覗き込みながら訊ねた。
「ねえ、それってプライベート・ピクシーってやつ?」
「へ?」
「あれでしょ、プレオープンの販促キャンペーンで抽選配布されたって言う………。へぇー、初めて見るなぁ」
「あ、わたしは………むぐ!」
何か言いかけたピクシーの顔を少年の手が覆った。
「そ、そう、それだ。俺クジ運いいんだ」
「ふぅーん…………」
リーファは改めてスプリガンの少年を上から下まで眺めた。
「な、なんだよ」
「や、変な人だなあと思って。プレオープンから参加してる割にはバリバリの初期装備だし。かと思うとやたら強いし」
「ええーと、あれだ。昔アカウントだけは作ったんだけど始めたのはつい最近なんだよ。ずっと他のVRMMOやってたんだ」
「へぇー」
どうも腑に落ちないところもあったが、他のゲームでアミュスフィアに慣れているというなら、ずば抜けた反射速度を持っていることについても頷けなくもない。
そこでリーファはもう一度、紅衣の少年のほうに向き直る。
「そっちのキミも改めてお礼を言うわ。ありがとう」
紅衣の少年は、しばらくリーファの言葉が聞こえなかったかのようにぼんやりと宙空を見つめていたが、はっとしたように笑顔を浮かべる。
あれ?とリーファは思った。第一印象があまりにも強烈過ぎたんで気が付かなかったがこの子、びっくりするくらい無邪気な笑顔を浮かべる。
正直、このギャップは反則だ。
「ぇ………と、一応訊いていい?あなたの種族は?」
そのリーファの言葉に、初めて気付いたかのように深く被っていたフードを取った。その下から現れたのは、マフラーと同じくらい漆黒の長髪。
長すぎるので、後ろで軽く縛っているらしい。そしてその髪の間からにょっきりと生えた───
ネコ耳。
そこまで視認した時、やっとリーファは肩の力を抜いた。綺麗な三角形のそれは、ケットシーの証だ。シルフとケットシーは友好関係にあり、仲がいい。きっとそれは、双方の領主が仲がいいせいかもしれない。
「僕の名前はレンホウ、レンって呼んでね」
レンと名乗った少年が言い、近寄ってきてすっと右手を突き出してきた。
それを握り返しながら、リーファは笑顔でもう一回言った。
「あたしのことはリーファでいいわよ。よろしくね、レン」
視界の端では、キリトが手を開いて、中から出てきた頬を膨らませたユイと名乗ったピクシーに平謝りしているという図が展開されている。
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