黄巾の章
第1話 「しゅ、しゅみましぇん! あう……かんじゃった」
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だが、俺たちが出陣しないってどういうことだ?」
この日、俺が入室した際に聞こえたのは「軍は私と星で率いる」という白蓮の声。
その質問に、白蓮は頭を振った。
「そうじゃない、盾二。お前達に出陣するなというんじゃない。私の軍は、私と星が率いる。そういっただけなんだ」
「? 同じじゃないのか? 俺たちの率いる兵がいないんじゃ……」
「そうじゃなくてね、ご主人様」
桃香が白蓮の言葉を引き継ぐ。
「白蓮ちゃんが言いたいのはね、私たちにとって好機なんじゃないかっていうこと」
「? どういうことだ?」
「あのね……」
桃香が言うには、独立して賊――黄巾党を単独で鎮圧すれば朝廷から恩賞を賜り、それなりの地位に封されるだろうとのこと。
つまりは――
(名を挙げるチャンスだ、ということか……しかし)
と、白蓮を見る。
俺が目線を向けると、苦笑しているその様子からなんとなく事情が察せられた。
(態のいい厄介払い、か……まあ、白蓮も一刀がここを離れたことで、俺たちがここにいる理由がないことを薄々感じていたしな)
公孫賛の四客将、なんて言われて数ヶ月。
白蓮にもその名は聞こえているだろう。
ある意味、名声も白蓮以上になりつつある。
(確かに俺たちにとってもいい機会……これを逃すとお互い、あまり良い関係ではいられなくなるかもしれない)
力も名声も上、なのに忠誠も誓っていない客将が主の下に居続ける……トップに立つ人間の心理を考えれば相当な人格者でもなければ耐えられないかもしれない。
(人のいい彼女だからこその温情、というわけか……甘えてばかりもいられんし、そうする理由もない)
なにしろこっちは桃香の志がある。
それが今の俺の生きる理由でもあるのだから。
「なるほど、わかった」
ここは彼女の温情にありがたく乗るとしよう。
狡兎死して走狗烹らる――なんてのはごめんだからな。
「しかし……さて、どうしたものか」
「ご主人様がおっしゃりたいのは……手勢のことですか?」
さすが愛紗、いい勘してるね。
方法はあるが……俺から言っていいものだろうか?
そんな俺の一瞬の躊躇。その時、今まで黙っていた星がフフッ、と笑う。
「なに、手勢なら街で集めれば良いではありませんか」
「お、おいおい! そんなの――」
「おや? 盾二殿たちに独立を促しながら、その率いる兵を集めさせないつもりだとでも?」
「うっ……」
「なに、義勇兵の千や二千、白蓮殿の器量からすれば問題ありますまい。なにより、ここには盾二殿や愛紗殿、鈴々殿が調練し、鍛え上げた兵が居ります。いまさら新兵や義勇兵を集めて統制が取れなくなるよりは、よほどいい」
「そ、それは……」
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