黄巾の章
第1話 「しゅ、しゅみましぇん! あう……かんじゃった」
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―― 盾二 side 北平 ――
一刀を華佗に預けることになった夜。
あの日、華佗に一刀を預けることを桃香や白蓮たちに話したが、皆俺がいいのならば、と了承してくれた。
一刀がいつ目覚めるかもわからないため、もし俺がいないときは白蓮宛てに連絡することを伝え、華佗は一刀を馬車で連れ出した。
それから数ヶ月。
華佗からは、これといった連絡は無いままだった。
とはいえ、通信手段もないこの時代である。
かなり遠い場所にいるのかもしれないし、連絡が出せないのかもしれない。
悶々とはしていたが……預けた以上、こちらは待つ以外にない。
なにより、信じて託したのだ。
疑念を抱いては信義にもとる。
そんな内心の葛藤とは裏腹に、公孫賛――白蓮の下で盗賊退治や政務に精を出した。
近隣では公孫賛の四客将、なんていう名前がでているらしい。
俺と愛紗、鈴々と星のことらしいが……客将ってのがネックなんじゃないだろうか?
俺たちは白蓮に力を貸してはいても、その傘下というわけではない。
何より俺たちはここにいる理由は、一刀のためでもあったのだ。
だがその理由も消失した今、ここに留まる理由はもうないのかもしれない。
この数ヶ月、一時の恩返しとして客将に留まった状態を続けていたが……潮時なのではないだろうか。
桃香たちには相談していないが、おそらく桃香や愛紗はそう考えているだろう。
なにより最近の大陸の様子を耳にするようになったからだ。
匪賊の横行、大飢饉、そして疫病。
ある意味、この時代ならば仕方の無いことだろう。
医療も生活レベルも、俺のいた世界とは天と地の差がある。
なにより農家が耕した畑に種をまいて、後は天に任せるというのが農業の基本と聞いて唖然としたものだ。
そんなレベルでは収穫の安定もせず、しかもそれを野盗に襲われては人心も荒れるというもの。
そして死んだ人を弔うのは土葬であり、殺された人は野ざらし。
これでは疫病が流行るのも当たり前というものだ。
それが邑から街へ、街から都へと波及していく中。
ついに暴動が、各地で起こりだした。
そして本来鎮圧されるべき暴動は、官軍すら打ち倒し全滅させたという。
そのまま各地に飛び火した戦乱は、大陸全土を包み込み、いつしかこう呼ばれるようになる。
黄巾の乱、と。
だが、それは後世の人が名付けた名前だ。
この世界では、未だその名では呼ばれていないだろう。
しかし、その大乱は確実に起こり――朝廷から白蓮の元に討伐令が下ったのは、つい昨日のことだった。
そして俺は今、王座の間で白蓮たちと話し合っている。
「討伐令が来たのは聞いた。
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