無印編
第二部プロローグ 二年後
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二年。
この長いようで短いじかんだが、二年間だけでも結構変わっていくものだ。
たとえば。
小学生くらいであれば成長期で、身長が伸びていたり、高校生ともなれば付き合う相手が変わっている、などということも多いと聞く。
そんな風なこともあり、久しぶりに帰ってきたこの街を前に、俺の頭の中ではこの二年間で知り合いが変わってやいないか、もしくは自分のことを忘れてしまったのではないかと危惧していた。
「二年ぶりかぁ……何もかもが懐かしく感じ…ヘボォ!?」
眼下に見える故郷、海鳴市を見下ろしていた俺の背中に突如として走る衝撃。
ここ二年間でこの理不尽なタイミングによる理不尽な攻撃に慣れ親しんだ身として、わざわざ背後を振り返って確認など不要だ。
「毎度毎度思うんだけど、玄関の絨毯踏むノリで俺を踏むのヤめてくんない? そのなにも感情のこもっていない眼で見られると自分が人間だという自覚を忘れそうになるんだよ」
「? 無理言わないでください。モノをヒトとして扱うなど神が認めませんわ」
言い返そうとしたところで、俺を踏んづけていた人間……マリアがところで、と話し出す。
「帰ってきてそうそうですが、お仕事です。さ、お行きなさい」
「……」
「どうしました?」
俺の沈黙に気が付いたらしい彼女は問う。
対する俺の答えは、彼女の手の持つ者への視線。
「……本格的に犬扱いしてない?」
「今さらでしょう?」
さも当然といった風に片手に持ったそのフリスビーを掲げるマリア。
こいつはあれか、本当に俺がアレを取ってくるとでも思っているのか。
いくら俺とて二年間のしごきに耐えてきたのだ、あとの折檻が恐ろしくて取りに行くなどはない。
よって、俺がこれを取ることなど万に一つも……
「そーれ!」
そして、自信に満ちた目で彼女と相対するために顔を挙げた俺は。
「……」
見てしまったのだ。投げられて虚空へと消えていくフリスビーに張り付けられた……俺の全財産が詰まったゆめの塊……預金通帳を。
「……ウフフ」
「……アハハ」
ふと、隣のマリアと目があい、お互いにやわらかく微笑んだ。
微笑んで、
「チクショォォオオオオオオオ!! この悪魔がぁぁぁあああああああ!!」
全力で俺は夢に向かって駆け出した。
「上等だぁぁああああああ、やってやんよぉおおお!!」
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