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気合と根性で生きる者
第三話 見えない駆引き
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る。神格保有者を打ちのめしたという噂も、このことから無駄に信憑性が増してくる。

「じょ、冗談じゃねえ!!」

 ガルドは我を忘れて叫ぶと隠し部屋を開き、金品を荷に掻き込む。

 鬼種を名乗る少女は金の毛先を指先で弄びながら呆れたようにその様を見る。

「これはまた、随分とため込んでいるようだな・・・・・・しかしゲームからは逃れられんぞ」

「し、知ったことか! 俺が一体どれだけの野望を抱いて箱庭に来たと思ってやがる! 何年も何年も何年も・・・・・・ただの獣でしかなかった時代からずっと箱庭の上を目指して生きてきたんだ! それをあの小娘・・・・・・畜生・・・・・・!」

 悔し涙と恐怖の入り混じった声で嘆く。自分はどこで間違えてしまったというのか。

 かつて森で生きていた頃・・・・・・牙と爪を頼りに生きていた頃のように。

 今度は知恵と策謀を用いて伸し上がってきただけなのに。

「ふーん。ちゃんと志とか目標とか、そういうのを持って生きていたんですね」

 ビクッ! とガルドの体が恐怖で震える。振り返って確認するまでもなかった。忘れる筈もない、好意的な笑み一つで自分を恐怖に陥れた、眼鏡の少年の声なのだから。

「な・・・・・・んの――」

「貴様、一体何処に隠れていた?」

 ガルドの声を遮って、鬼種を名乗る女性が問う。それはガルドも気になっていた事ではあるのだが、生憎彼にはそんな余裕は残されていなかった。

「何処に、と言われましても・・・・・・先ほどから、ずっと扉の入口でお話を聞かせていただいていました。悪趣味だとは思われるでしょうが、これも敵情視察故に、どうか目を瞑っていただければと思います」

 好意的な印象を与える笑みで彼はそう言ってくるが、彼女にはそれがとても胡散臭く聞こえて仕方がなかった。

 怪訝そうな顔をする彼女を無視して、彼はガルドの方に向き、その笑みを崩さずに話し掛ける。

「今回は、少し貴方の様子を見ていました。ただの欲望だけで動き、目標も何も持っていない烏合の衆と最初は判断していましたが――訂正します。貴方にはまだ、大物になれるチャンスと器がある。志までは腐っていないのが、その証拠です」

 天使の様な優しい旋律を奏でている様な言葉。ガルドは無意識に彼の方へと振り向き、その顔を見ていた。

 ――カフェで会った時とは、似ても似通わないその表情と重圧。あの時、ガルドはこの笑顔に恐怖していたが、今は違う。ガルドにも、今はただ優しい、好意的な笑みに見える。

「今から僕が出す条件次第で――貴方を、ノーネーム≠フ手から救ってあげましょう。対価として、貴方は名、誇り、名誉、コミュニティを失うことになりますが、その夢の続きはこの僕が保障します」

「・・・・・
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