第三話 見えない駆引き
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なそれを見て、ガルドは獰猛に唸り声を上げて威嚇した。
「テメェ・・・・・・どこのどいつか知らねえが、俺は今気が立っているんだ。牙を剥かねえうちにとっとと失せろ」
「ふふ。威勢がいいのは評価してやる。だが、獣からの成り上がり風情が鬼種≠フ純血である私に牙を剥くのか?」
なっ、と声を詰まらせて驚愕するガルド。先ほどまでの勢いは一瞬にして萎え果てた。顔は青ざめ、巨体をよろめかせて後ろに下がる。そしてもう一度金髪の女を確認した。
細かい波の引いたブロンドの髪に年不相応な凛とした顔立ち。覗きこめば吸い込まれそうな艶美で赤い瞳には息を呑まずにはいられない。
その雰囲気から、ガルドはこの女がタダものではないことを承知したが、それでもにわかに信じがたい事だった。
「き、鬼種≠フ純血だと・・・・・・!? 馬鹿を言え、鬼種の純血と言えば殆んど神格じゃねえか! そんなもんがどうして俺の下に来る!? 名無し°、の尖兵か!?」
純血≠ニは系統樹の起点に位置するギフトを指す言葉だ。ガルドのように多種が混ざった成り上がり≠ニは違い、種の中でも個別の呼び方をされる者達である。
金髪の少女は髪を掻きあげてガルドの言葉を指摘する。
「ああ、それだ。実はあの名無し≠ニは少々因縁があってな。もう再建は望めないと思っていたんだが・・・・・・新しい人材が神格保有者を倒したと聞いて、様子を見に来たのだ」
今度こそ、ガルドが打ちのめされたかのように跪く。それは、目の前の鬼種≠フ女に対してではない。
久遠飛鳥だけでも自分の手には余る敵だというのに、その他に神格保有者に打ち勝つような化け物を相手にしなければならないという、その事実に絶望したのだ。
「そ、それは何時の事だ? 黒ウサギじゃねえのか?」
ここで黒ウサギであってくれれば、どれだけ心が救われた事か。黒ウサギは審判権限のせいでゲームに参加するのは殆んど出来ない状況。しかし、もし神格保有者を打ちのめしたという噂が、彼女によるものであるとすれば、ガルドにはまだ希望が見えていた事だろう。
「今日の夕刻より少し前と、それより少し時間が経った頃だな。聞けばまだ若い二人の少年らしい。お前と問題を起こした奴と全く別の人間ともう一人――眼鏡を掛けた、黒髪の少年だそうだ。お前も、一度はその少年に会っている筈だが?」
その希望を打ち砕くように、鬼種≠フ女はガルドに告げる。いや、比喩などではなく、本当にガルドの希望が打ち砕かれたのだ。
眼鏡を掛けた黒髪の少年――それは今日、カフェでジン=ラッセルと一緒に居た連れの一人である。
ガルドはその少年に好意的な笑みを浮かべられただけでも――生存本能が刺激され、脳が「逃げろ」と言っていたほどの者であ
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