第三話 見えない駆引き
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絞られていたのです」
話を聞いていく内に、白夜叉の瞳はみるみる見開かれていった。まさか、自分がそのような最初の段階でこの少年の罠に嵌っていたとは、想像もしなかったのだろう。
そして、少年のいう事は的を射ている。黒ウサギの同士である彼を消すことは、たとえ自分の敵になろうとも躊躇われた。
そんな躊躇いを持ってこの少年と決闘≠したのであれば・・・・・・先日の件から考えて、勝てるとは断言しづらい。自らが仏門に下って実力を抑えている分、不利な状況だ。あの五桁の魔王並みの実力を誇るガルムを、あれだけあっさりと倒したのだ。この少年の力は、まさに未知数であるために、今の状態で戦うということが無謀に思えてくる。
そんな危険な賭けをしてまで、この少年と決闘≠する気は、白夜叉には全くといっていいほどなかった。
そしてそれ以前に、白夜叉は知り合いの同士をその程度の理由で消すほどの小物ではなかった。
だからこそ、この少年の言っている事は何もかもが正しい。他の所にいって面倒になるよりは、まだ自分の手中に収めていた方がいいというのも、まったくの同意見である。
白夜叉はそんな勝の交渉に関心を通り越して呆れたのか、一つ溜息を吐く。
「――よかろう。ただし手を貸す以上、それ相応の働きをしてもらう故に、覚悟しておれ」
「えぇ。部下に経験を積ませるいい機会です。どうぞご遠慮なく、お申し付けくださいませ」
どうやら、こちらの出す面倒事すら、部下の経験を積ませるために利用するつもりらしい。結果的に、一番得をしたのは誰でもない、勝のコミュニティだったことを、白夜叉は改めて認識させられ、それが嬉しかったのか、それとも可笑しかったのか、気分良さ気に哄笑をあげる。そして一頻り笑ったかと思うと、その扇子をパシッと閉じ、それを勝に向けてこう告げた。
「おんしの成長、期待しておるぞ。いずれ私と戦う準備が出来たのなら、その時は喜んでその相手をしよう」
勝はその言葉に一度頷いて立ち上がり、最後に部屋から出る前に一礼をして、サウザントアイズ%一〇五三八〇外門支店を後にしたのだった――
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