第三話 見えない駆引き
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黒ウサギに案内されて来た場所は、ノーネーム≠フ本拠地前。魔王との戦いで滅ぼされ、その爪痕が残った跡地だった。
乾ききった風、それによって舞う砂塵、死んでいる土。そして、視界に広がる街並みは廃墟のような姿。
広大なこの土地を見て、一時期はかなり大規模なコミュニティだったことは一目瞭然だった。しかしだからこそ、それが滅ぼされた姿は悲惨なことこの上なかった。
試しに囲いの残骸を手に取って握ってみるが――その木材は乾いた音と共に粉状になって風に流されていった。
「・・・・・・おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームがあったのは――今から何百年前の話だ?」
「僅か三年前でございます」
「ハッ。そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この風化しきった街並みが三年前だと?」
そう。このノーネーム≠フコミュニティの領地は、まるで何百年という時の中放置され続け、自然に滅んでいったかのような有様なのだ。それこそ、三年前まで人が住んでいたなどと信じられない程に。
整備されていた筈の街路は砂に埋もれ、要所に使われていた金属類は錆に蝕まれて折れ曲がり、ある家のベランダにはテーブルのティーセットがそのままの状態で出ている。
生活の痕跡は辛うじて残っているが、これを三年前まで人間が住んでいたといって、果たして何人が信じるのだろうか。
そんな廃墟でありながらも、獣が――いや、生物という生物が寄り付かない。土地が死んでいるせいか、害虫すら見当たらないのだ。
黒ウサギは廃墟と化した街から目を逸らし、朽ちた街路を進む。
「・・・・・・魔王とのゲームはそれほどの未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ・・・・・・コミュニティから、箱庭から去って行きました」
大規模なギフトゲームの際に、白夜叉のように世界を創造する奇跡の顕現――ゲーム盤を用意するのは、これが理由なのだ。
力のあるコミュニティと魔王が戦えば、両者が強ければ強い程にその傷跡が深く刻まれる。魔王はそれをあえて楽しんだのだろう。黒ウサギは感情を殺した瞳で風化した街を進む。飛鳥も耀も、その心境は複雑なのだろう。どういった反応をすればいいのか分からないと顔に出ていた。
しかし、十六夜だけは他の誰とも似通わなかった。彼は瞳を爛々と輝かせ、楽しそうに、そして不敵に笑って呟いた。
「魔王――か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか・・・・・・!」
この時、彼らはまだ気づいていなかった。
気付かなかった原因は、
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