『とあるナツイロノキセツ』
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猛暑が人々を襲う、8月そのものの気候。無論、季節は夏真っ只中である。
これはそんな日の、何気ない日常の1ページ……長い二人の物語から切り取った、幸せな物語だ……
「きーよーたーかー」
己の名を、だらしなく呼ぶ声が聞こえる。聞き慣れた――そりゃあ毎日聞いているし――愛らしい声……が、今はその声にも笑顔で返せる気がしなかった。
「……なんですか、リッカさん」
畳の上でうちわで扇ぎ、何とかそう答えたのは芳乃 清隆
よしのきよたか
。彼の目の前では、愛する人物が顔を覗かせていた……縁側に足をだらけさせ、逆さまに顔を見せた状態で、だが。
何を隠そう、このだらしない格好の金髪着物美人こそが芳乃清隆の恋人であり、世界に五人しかいないカテゴリー5の魔法使い――リッカ・グリーンウッド。
まぁ、そんな肩書きこの初音島では意味が無いので、こんな姿を晒していられるのだが。無論、恋人である清隆の前だから、という前提条件つきで、だが。
とにかく、こんな熱い中扇風機とうちわだけで何故いるかと言えば……
「なんでクーラーが壊れてるのよー……」
「しょうが無いですよ……明日まで我慢しましょう」
クーラーが絶賛故障中で、このクソ熱い中を扇風機とうちわだけで乗り切らなければいけないからである……え? 時代的にクーラーはない? 気にするな、仕様だ。
そんなこんなで、二人は必死に熱さを乗り切ろうとしている訳だが……この通り、という事である。
「って言うか、リッカさんなら熱さを和らげる魔法とか使えるんじゃ……」
「えー、結局は私がやらなくちゃじゃない。かったるいわよ、そんなの」
ですよね、と予想通りの反応に苦笑しながらもそんなところも可愛いなと、内心凄い惚気る清隆。まぁ、ベタぼれなので仕方がない。
――と、リッカがピコンと言う音が付きそうな表情になり、先ほど迄のかったるそうな身体は何処へやら、身軽に立ち上がり首を傾げる清隆へ向かってニッコリ微笑み……ダイブした。
「って!? ちょっとリッカさうわっ!?」
清隆のツッコミも虚しく間に合わず、凄まじい音を立てて畳の上へ叩きつけられる。そんな状態でも、リッカをしっかりと抱き止めるのは流石というか……その彼の上に覆いかぶさった本人は、先程の熱さも何のその、幸せそのものの笑みで清隆の頬にベッタリと自分の顔をくっつけていた。
「り、リッカさん?」
「んー、清隆の頬は冷たいわねー……もうちょっとこのまま」
……どうやら、求めていたのは冷たい人肌だったらしい。とはいえ、先ほどまで冷やしていたとはいえ、こんな事をしていては直ぐに熱くなると思うのだが。
さらに彼の精神衛生上良くない……のかは知らないが、今のダイブでリッカの着ている着物
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