第34話 海鳴市に正義降臨!(2)
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天使は続ける。
「我らへの気遣いは無用です。主は仰られました。『明日の事を誇ってはならない。一日のうちに何が起こるか、知る事はできないからだ』と。
今、召喚師殿には身命を賭して為さねばならぬ事がお有りのはず。されど、明日の事は分からぬもの。もし明日、召喚師殿に今までにない艱難が降り注いだなら?
……その時、この躊躇いが取り返しのつかない事を生むのやもしれません」
純吾の後ろへと、パワーは視線をやる。純吾もつられて視線を追うと、そこにはリリーや、すずか達の姿があった。
パワーが何を言いたいのかを悟り、純吾は慌てて能天使に向き直る。パワーの顔の下半分を覆う仮面の上にある目が、出来の良い生徒を褒めるかのような、そんな風に微笑むかのように形を変えていた。
「パワー、ありがとう。ジュンゴ、もう迷わない」
「えぇ、『汝ら世にありては艱難あり、されど雄々しかれ』
我が後進が、召喚師殿の艱難を払う手助けにならんことを」
パワーはそこまで言うと深々と頭を下げ、一歩下がる。純吾も迷いを覚ましてくれた事への感謝を込め一礼すると、今度はジャックフロストと向き合う。
「ヒホー、難しいことパワーのおっちゃんは言ってたけど。オイラはジュンゴのしたい事ができる様におーえんするだけホー」
「ん…。ありがと、ジャックフロスト」
先ほどとは打って変わって、とても呑気な言い方で合体への了承を貰い、純吾は顔をほころばす。勿論、自分の思惑通りに事が運んだからなどではない。舌っ足らずな言葉の裏に、自身への深い信頼を感じたからだ。
「ただ…」
「?」
何かを決めかねているのか。もじもじと、ジャックフロストが顔を俯かせ、人さし指同士をつっつきあう。それから意を決したのか、もう一回純吾を見上げて言った。
「さ、最後にぎゅーってしてほしいホッ!」
「なっ、なんだってェーーー!!」
ジャックフロストの言葉が聞こえるや否や、後ろからリリーの素っとん狂な声が上がる。それから「おま、あざとっ」とか、「そこ代われっ」とか聞え、一緒に「さ、最後何だから」「おい止めろっ」など懸命の努力も聞えてきた。
そんな騒々しいBGMをバックにしながら、純吾は膝をついてジャックフロストを抱きしめた。
「ホー、あったかいのは苦手だけど、こうやってされるのは嬉しくなるホ」
「ん…。ジャックフロストは、ひんやり」
片方の手で特徴的な二角のとんがり帽子をなでる。本当は、ジャックフロストの体はひんやりどころか凍ってしまいそうなほど冷たい。けれども、それをやめはしない。体は冷たいが、どこか心は温かい。
しばらくそうしていたが、やがてジャックフロストの方から離れた。
「うん。ジュンゴ、オイラの事冷たかったのにこう
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