第百二十話 出雲の阿国その十二
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「あの二本の刀からわかったわ」
「そのことがですな」
「よく」
「うむ、わかった」
そうだったというのだ。
「人は剣からもわかるからな」
「ではあの者はやはり」
「その筋は」
「かなりよい者じゃ」
幸村はそこから直江の人としての質を見極めていた。
「若し武田におれば共に馬を並べて戦えたであろうな」
「そして共に御館様の天下統一を支えた」
「そうなっていましたか」
「二人で」
「そう思うと残念じゃ」
今度はその言葉に実際に残念なものも入れる幸村だった。
「言っても詮無きことにしてもな」
「それでもですな」
「やはり」
「うむ、しかし」
まだ言う幸村だった。
「ここはあれこれ言っても仕方ないのう」
「ではですな」
「今かは」
「悠然と構えていればよいな」
こう言ってそのうえでだった。
幸村は夜まで十勇士達と飲んだ、そして夜になると。
「冷えたしこれで休みますか」
「ここは」
「うむ、宿に戻ろうぞ」
こう話してそのうえでだった、彼等は宿にしている寺に戻った、そのうえでその日は休むことにしたがここでだった。
三好清海がこう幸村に囁いてきた。
「南禅寺ですが」
「南禅寺か」
「はい、あの寺のことですが」
「あの寺は都でも名札と聞いていますが」
「得体の知れぬ噂があるな」
「どうも今の住職がおかしいのです」
いぶかしむ顔で言う三好清海だった。
「表には滅多に出てきませぬし」
「確か崇伝殿だったな」
「はい。その御仁ですが」
「あの南禅寺の住職だから相当な者だが」
「それでも表に出ないというのは」
それはだというのだ。
「おかしいと思います」
「南禅寺には宿は取っておらぬが」
幸村は腕を組む、まだ河原にはいる。
「それでもじゃな」
「出来るだけ近寄らぬ方がよいやも知れませぬ」
「怪しい相手には近寄らぬが吉じゃな」
こうも言う幸村だった。
「そういうことじゃな」
「そういうことでいきましょう」
こうした話もした、幸村達は様々なことを思いながら都にいてそのうえで多くの出会いを経ていくのだった。それは彼にとって一つの大きなうねりでもあった。
第百二十話 完
2012・12・30
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