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魔弾の射手
第一幕その三
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クスに手渡した。
「ほら」
「うん」
 彼は仕方なくそれを受け取った。そしてカスパールに顔を向けた。
「まあここは飲め。森林官様からのおごりだぞ」
「しかし」
「あの方の御厚意をむげにすることは止めた方がいいぞ」
「そういうことなら」
 マックスはそう言われ渋々酒を口に近付けた。そして飲んだ。カスパールはそれを見て安心したような笑いを作った。
「よし、それでいいんだ」
「ああ」
 だがマックスの顔は晴れなかった。
「悩みなんて生きてる限り尽きやしない。しかしそういう時の為にこれがあるんだろうが」
 カスパールはそう言いながら杯を指差す。
「だから飲め。折角明日は可愛い花嫁を迎えるというのに」
「だから不安なんだ」
 マックスはやはり暗い顔でそう答えた。
「わかるだろ、今の僕だと」
「そうやってまた愚痴を言うつもりか」
 しかしカスパールはそんな彼を叱り飛ばす様に言った。
「そんなことだと出来るものも出来やしないぞ。いい加減にしろ」
「しかし」
「しかしも何もない。いいか」
 彼は激昂したふりをして話をはじめた。
「俺があの戦争に参加していたことは知っているだろう」
「ああ、それは聞いている」
「その時に習ったんだ。人生ってのはな、この酒とカードと女がいればそれで充分だってな。それから言うんだ」
「僕にかい?」
「そうだ、他に誰がいる。いいか、よく聞けよ」
「ああ」
 マックスは渋々ながらも耳を傾けさせた。

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