第一幕その三
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鳥の羽根が着いた紅の帽子を目深に被っている。その奥に見えるその顔は深い青い髭に覆われておりその目は赤黒かった。そして異様に蒼ざめた顔をしていた。
その男はマックスを見ている。だが彼はそれには気付かない。
「明日だ。遂にこの日が来た」
彼は呟く。その間男はゆっくりと森から出て来た。そして木の側で彼を見ている。
「苦しい。しかも先が見えない。一体どうしたらいいんだ」
マックスは苦しい顔をしている。後ろの男はそれを受けてかマックスの方に行こうとする。だがそれを止めた。
「このままでは駄目だ。神よ、僕はどうすればいいのでしょうか」
神という言葉に後ろの男は反応した。顔を顰めさせた。
「この苦しみは希望を覆い潰し、悩みは尽きることがない。僕はどうしたらいいんだ」
今にも頭を抱えそうな様子であった。
「森に入り、野を越えて獲物を捉えてきた。そして愛しいあの娘にその獲物を捧げてきた。だが今はこの銃が獲物を捉えることはなくなった」
彼は嘆いていた。男はその間に彼の後ろに来ていた。
「神に見棄てられたのであろうか。それとも悪魔に魅入られたか。どちらにしろ今僕は苦しみの中にいる」
男は一旦何処かへ姿を消した。まるで影の様に急に姿を消した。
「あの娘の望みも僕の望みも変わってはいない。だが今僕には絶望が口を開いて待っている。これから逃れるにはどうしたらいいのだろうか」
その後ろで男は再び会姿を現わした。木にもたれかかってマックスを見ていた。
「神は何処におられるのか」
それを聞いた男の顔が再び歪んだ。
「そして僕は救われるのだろうか。何時この絶望の状況から逃れられるというのか」
男はそれを冷たい目で見ていた。だがやがてそれにも飽きたのかまた影の様に姿を消した。そして何処にもいなくなった。
マックスは一人酒場の外の椅子に腰掛けた。ここでカスパールがやって来た。
「おい」
そしてマックスに声をかけた。
「何だい?」
彼はそれを受けて顔を上げた。言うまでもなく暗く沈んだ顔であった。
「どうしたんだ、そんなに沈んで。さっきのことか?」
「ああ、けれど大丈夫だよ」
彼は無理をして平静を装った。
「だから一人にしておいてくれ」
「そういうわけにはいかないな」
だがカスパールはそれを拒んだ。そして店の中に声をかけた。
「おばさん、グラスを二つ。赤を頼むよ」
「あいよ」
店の中から声が返ってきた。それを受けてカスパールはニヤリと笑った。
「もう少し待ってろよ。すぐに来るからな」
「気持ちは有り難いけれど」
今は飲みたくない、そういった顔であった。だがカスパールはそんな彼を宥めることにした。
「まあ聞け」
ここでおかみが酒が入った杯を二つ持って来た。カスパールはそれを受け取ると一つをマッ
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