第一幕その二
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」
「うむ」
彼はそれに頷いて説明をはじめた。
「私の先祖もまた猟師だったのは知っているな」
「ええ」
これは彼等にとっては言うまでもないことであった。皆それに頷いた。
「御領主様のお側におってな。ある日その御供で森に入った時一匹の鹿を見つけたのじゃ。だがその鹿は普通の鹿ではなかった」
「といいますと」
これは彼等にとっても初耳であった。思わず問うた。
「その鹿には一人の人間が鎖で繋がれていた。何故だかわかるか」
「いえ。何かの罰だとは思いますが」
「そう、罰だったのだ。昔は森の法に従わぬ者をこうして罰していたのだ」
「そうだったのですか」
「うむ、だが御領主様はそれを見て気の毒に思われた。そして周りの者に対して申されたのだ。罪人を傷つけることなく鹿を仕留めた者には褒美をやろうと。我が先祖もそれに従った」
「その褒美は」
「うむ。この森の一部と城を一つだった」
「それは凄い」
それを聞いた人々は思わず声をあげた。
「そしてどうなりました!?」
「我が先祖は見事鹿を撃った。そして見事森と城を手に入れたのだ」
「そうでしたか。そして鹿に繋がれていた罪人はどうなったのでしょうか」
「命に別状はなかった。少し傷は負っていたようだがな」
「それは何よりです」
人々はそれを聞いてホッと胸を撫で下ろした。
「それにしても素晴らしい御先祖様です」
「本当に。おかげで哀れな罪人が救われました」
「そう、そしてそれが試験射撃のはじまりとなったのだ。それを記念してな。長い戦争だったがこの辺りは幸い戦禍に遭わずに済んだ」
「はい」
「それで今も残っている。いいことだと思わないか」
「はい、そう思います」
皆それ賛同した。
「だがな。先祖のこの功績を妬んだ者がいた。これも何時でもある話だな」
「そうですね、残念なことに」
「そしてこれを中傷した。先祖が悪魔の弾を使ったのだと」
「悪魔の弾!?」
「それは一体何でしょうか。よからぬものなのはわかりますが」
「確か七つあるのでしたな」
ここでキリアンが言った。
「そうだ。よく知っているな」
クーノがそれを聞いてキリアンに顔を向けた。中にそれを聞いてギョッとしている者がいた。
「俺のことか!?」
それは猟師の一人であった。背が高く逞しい身体をした黒い髪と髭の男である。その顔は暗く、少し歪みの様なものが見受けられた目の光も暗く、何かよからぬことを考えているような顔であった。彼の名をカスパールという。この村では腕利きの猟師の一人として知られている。
「それが問題になってな。一時は異端審問官まで呼ばれそうな話だったという」
「本当ですか!?」
誰もが異端審問官の名を聞いて顔を青くさせた。それはこのボヘミアの森の中においてさえ恐怖の象徴である
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