第三話「大鬼(トロル)」
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ロロロロロオアウアー!」闇の中でそいつはいつになく荒れ狂っているように感じた。
タチカゼは戦慄した、子供のときより、遠目にしか見てこなかった化け物がいますぐそこにいる。
「トロルだー!逃げろー!ゴブリンもいるぞー!」
村のだれもが恐れた大鬼トロル、そいつが今、そこで荒れ狂っている。
人は、砦のなかや町のなかにいるときは、鳥の巣の小鳥のように安心しきっているが、それがイコール、危険じゃないとはいいきれない。
その壁を粉みじんにして暴れ狂う化け物もいるのだ。
タチカゼは考えた。落ち着け、こんな巨人でも生き物だ、頭か心臓をやれば死ぬはず。
ズンとトロルが前に出る、硬くなってもりあがった皮膚は剣など通りそうもないましてや矢など蚊に刺されたようにしか感じないだろう。
タチカゼは逃げた、しかし砦は袋小路、どこに逃げる。高いところだ!奴を見下ろせる場所。
死ぬ気で城壁を這い上がったそしてあらためてその化け物を見てみた、焦る気持ちを抑えつけて見入る、古来、武術では相手を前にしたとき、構え、立ち居振る舞いからそのものの力量を図る、いくら相手がトロルといえど、動くものには必ず隙ができるもの、もしくは動くということそれ自体がすでに隙ともいえる。
落ち着いて、見てみるとトロルの動きは決して速くない、それどころか硬くもりあがった皮膚が邪魔して遅くさえある。
しかし門を一発で破壊したあの威力は無視できない、タチカゼの頭は今、ものすごく動いていた。そして門を吊っていた縄に目が行く、タチカゼは即座に城壁から飛び降りた、二、三メートルはある、その
高さを飛び降りてトンと着地し、縄を持ってトロルを目の前にした。タチカゼは刀を抜いて渾身の力で刃をトロルの無防備な腹に突き刺した。
意外なことに、あのトロルは苦しみもがきだした。
腹の皮だけは薄かったのだ。しかしこの巨体である。内臓の一つや二つやられても平気で動き回るだろう。
案の定、猛り狂ったトロルは突進してきた。
タチカゼはそこに合わせたように縄を垂らした、幸いなことにもう一方の縄は丸太に結ばれてあり、トロルはそれに足を取られる形となった。あの巨体が地に倒れた。
「いまだ、みな、トロルによじ登れ、頭でも背中でもいいから刺しまくれ、倒せる、倒せるぞー!」
人間がわらわらとカラスのようにトロルに群がる。
そして、兵士のだれかがトロルの後頭部を突き刺した、するともがいていたトロルはガクンと動きを止めた。
終わったと皆が思った、しかし思考は休められない。ゴブリンがあたりに火をつけ始めたのだ。ゴブリンの頭でそんな策を弄するなどみてもおもわなかった兵たちはみな散り散りになる。ゴブリンがイナゴのようにおそいかかる。兵とタチカゼ、数人が砦跡の最後の一室に避難した、そこは砦で唯一残っている部
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