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魔弾の射手
第三幕その四
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ックスの顔がまた青くなった。
「まさか・・・・・・」
「どうした、マックス」
 オットカールはそんな彼に声をかけた。
「いえ・・・・・・」
 だが彼はそれについて語ろうとしなかった。話せる筈もなかった。
「ところで弾は」
 クーノがその弾に気付いた。
「一体何処に」
「そう、それだ」
 オットカールも彼と同じ考えであった。
「見ればカスパールが倒れているが」
「しかしマックスは彼を狙ってなぞおりませぬぞ」
「だがああして今倒れているのだが」
「ううむ」
 クーノは倒れているカスパールを見て考え込んだ。彼は胸から血を流していた。
「ウググ・・・・・・」
「おい、大丈夫か」
 同僚達が彼を気遣う。だがその傷が致命傷であるというのは誰にもわかることだった。助かるとは到底思えない傷であった。
「しかし何故マックスの弾が」
「ああ、あいつはカスパールなんか狙ってはいないのに。どういうことだ!?」
 猟師達は首を傾げる。カスパールはそんな中で呻いた。
「クソッ、あの娘に神の加護があったとは」
「何!?」
 猟師達だけでなくそこにいた全ての者が彼の言葉に顔を向けた。
「今何と」
 だがカスパールは意識が混濁しているのか周囲のことにまで考えが至ってはいなかった。
「迂闊だった。まさかこんなことがあろうとは」
「おい、カスパール」
 周囲の者が声をかけるがそれでも彼は気付かない。
「一体どうしたんだ!?」
「ザミエル、それでも御前は満足なんだろう」
「ザミエル・・・・・・」
 その名を聞いて震えない者はいなかった。森に潜む魔王の名だ。
「おい、見ろ!」
 皆異様な気配に気付き気配がした方に顔を向ける。するとそこに陰気な顔をして濃い髭を生やした大男がいた。
「ザミエル・・・・・・!」
 カスパールは彼の姿を認めてそう叫んだ。
「あれがか」
 皆魔王の姿を見て息を呑んだ。
「迎えに来たのか、この俺を」
「まさかこの男は」
 皆カスパールのその言葉に沈黙した。
「悪魔に魂を売ったのか!?」
 その通りであった。そしてカスパールは自らの言葉でそれを証明した。
「ならば持って行け、地獄へも何処にも行ってやろう」
「やはり・・・・・・」
 彼等は言葉を失った。
 ザミエルはただカスパールを見ている。陰気な顔のままで表情は変えない。
「それもこれも神のせいだ。それさえなければ俺は地獄に行かずには済んだものを」
「・・・・・・・・・」
 今度は神を呪った。それがどれ程恐ろしい言葉であるのかわからない者はいない。

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