第一章 3
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せ。お前は下がってもいいぞ」
有無を言わせぬ男性の声が、扉の先から響く。この時、もしかしたら僕は緊張してビビっていたんじゃなくて、昔の記憶―言われた一つ一つの言葉をその声に、耳に囁かれた恐怖から、怯えてビビっていたのだと思う。
「はい」
それ以上は余計な事を言わずに、御爺さんは下がった。その無駄のない忠実な動きは、執事(若い時はということ)を思わせた。御爺さんが僕らに一言声をかけると、言われた通りに帰って行く。
(うわぁ…どうしよう)
扉のノブに手を掛けるも、開けることを躊躇って、拒んでしまう。手も震え、その振動が声の主にもばれてしまうのではないか、と不安になる。
「おい、どうした?入って来ないのか、客人よ」
そうこうしている内に、訝しげな声で問われる(向こうはそんなつもりで言ったのではないのだろうけど、どうも僕視点で話を進めると、こう人を信じない最低な人物という印象を植え付けてしまうらしい。だって仕方が無い、僕が思っている事がそうだから…)。
「開けるぞ」
ずうっと躊躇いがちで立ち止まる自分に手を差し伸べ、ノブに手を置いている僕の手の上から一緒になって手を握り、エドは開けてくれた。声と言い、その驚くような大胆な行動に、優しさに安心した。
(やっぱり、僕はエドが居ないと何にも出来ない男だ)
改めて、そう思う。昔が女だったから、とか理由にならないくらい臆病な自分。でもそれは、そんなに重要な事柄では無く、ウジウジ考えていたことが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
カチャリ―
ドアはその重そうな外見とは裏腹に、いとも簡単に力をあまり加えず、ノブを回した音以外に耳障りな音をたてずに、すんなりと開いた。ドアをゆっくりとした動作で押していくと、白く柔らかい世界が徐々に広がってくる。全て開けずとも、待ちくたびれた顔で豪華な椅子に腰を下ろし、こちらの様子を窺う主の姿が見えた。
「…申し訳ありません、大変お待たせ致しました」
最初に口を開いたのはやっぱり僕で、相手に失礼のない言葉を遣い言うが―目の前の男に対して、嫌悪感を抱いた表情を上手く隠せたか自信が無い…。
「いやいや、謝ることはない。こちらとしては、何か事件に巻き込まれてしまったのではないかと、心配しただけの事なのだから―なあ、クロエ」
王は優雅な話口調で、遅れて来た自分達を責めること無く、傍らに居る妻であろう女性の名前を呼び、愛おしそうに見つめた。
(………)
どうも複雑な気分だ。何て言ったらいいのか、良く分からないくらいに。
「初めましてエドワードに、リオ。この国へようこそ!貴方達がここに来るのを今か今かと、待ち浴びておりましたのよ」
夫も優雅なら妻もそうだと言わんばかりに、二人して似た気品のある話し方に、たじろぐ。
身ぶり手ぶりで表現し、それでいてとても美し
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