第三話
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容姿。天は二物を与えないというけど、リーラに限っては二物どころか三物四物も与えているんじゃなかろうか?
「だがまあ、そんなリーラでも完璧じゃないんだ。思い込みの激しさが玉に傷だな」
「思い込みの激しさ?」
「時々、冷静ではいられなくなる。あいつと森で会ったんだろ?」
「うん。ワルサ―持ってたね」
「ああ、あいつアレしか使わないんだ。で、何で森にいたかというとな、あんたが墜落したと聞いた時、あいつ自分で捜索隊を指揮するって言ったんだ。将校斥候なんて普通は考えられないよ。なんであそこまで熱心に張り切ってるのか不思議だったんだが――」
火の消えたタバコで俺を指差しニヤリと笑う。
「案外、あんたのことを気に入ってるのかもな」
「ほぇ?」
その言葉にマスクの中で目を瞬かせる。どういう意味だろう?
――カンカンカン。
扉をノックする音が聞こえてきた。心なしか荒っぽい叩き方だ。
「申し訳ありません。こちらにセレンはおりませんか」
扉越しにリーラの声が。セレンとは違いすぐに開けたりしない。
「あいあい、いるよー」
呑気に答えるセレン。扉を開けてあげるとリーラは失礼いたします、と頭を下げて入室した。室内を見渡しセレンに目を向けると僅かに眉を吊り上げる。
「……なにをしている、セレン」
「いやー、なにって……サボり? あははー」
目を細めて静かな声で問い掛けるリーラに笑って誤魔化すセレン。悪びれるどころか堂々としたその姿にむしろ感心を覚えた。
セレンの答えにピクッとリーラの目の端が引き攣る。
「厨房に行く日ではなかったか?」
「いやー、あたしみたいなガサツな女が食器洗いとか無理があると思うんだよね。エーファ辺りだと皿を割ってもまだ可愛げがあるけれど、あたしがやっても洒落にならないだけでしょ? だけど仕事しないわけにもいかないから、こうして忙しい振りしてサボってたってわけ」
リーラの振るえが段々と大きくなる。氷を想わせる冷徹な声で問い掛けた。
「……それだけか?」
「まあね」
「よし。なら部屋に戻っていろ」
「あいさー」
腰を上げようとしたところにリーラのストップがかかる。
「これも持っていけ。式森様はタバコをお吸いにならない」
「あいよ」
灰皿として使っていたガラスの皿を持って部屋を出ようとする。扉に手を掛けたところで振り向いた。
「ところで、あんたっていつもソレつけてるのか?」
「えっ? ああ……うん、そうだね。家にいる時以外はつけてるかな
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