第三話
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旅に出ることを知るはずがない。なにが目的かは分からないが、なにが起こってもいいように備えだけはしておこう。
ここのメイドさんたちも一見ただのメイドさんだが、その身のこなしは明らかに訓練した人のそれである。何人かはスカートの下や懐に銃器の類を忍ばせていたから、ここのメイドさん全員がそれらの扱いに長けていると見たほうが良いだろう。
どこで俺の情報を知り、何を狙って歓迎しているのか、今はまだ分からないが、一筋縄では無いことだけは確かだ。絶対に何か裏があるはず。
――場合によっては戦闘になるかもしれないな。
寝っころがって天井を眺めながらそんなことを考えていた時だった。ノックの音が扉から聞こえた。
「はい」
扉を開けると目の前には銀髪のメイドさんが。
「失礼します」
リーラさんは深々と礼をした。
「お食事をお持ちいたしました」
リーラさんの脇にはナプキンが掛けられたカートがある。その上には銀色のドーム状の蓋――クロッシュが被せられた数々の料理が置かれている。
「すぐにご用意いたしますので、お座りになってお待ちください」
「ん、ありがとう」
「いえ、どうぞお気になさらず」
ニコッと微笑んだリーラさんがカートを押して入室する。
椅子に座ると、テーブルの上にクロスが掛けられた。一目で高級だと分かるグラスが置かれる。
「ワインはどうなされますか?」
「ああ、俺飲めないから」
酒には弱いのである。リーラさんは代わりに葡萄のジュースを注いでくれた。
「こちらが、本日のメニューです」
ご老人が言っていた通り、夕食は豪勢の一言に尽きた。
「右手前からビシソワーズスープ、小鴨胸肉のロティ、フォアグラのポワレ――」
高級料理名をズラッと説明するリーラさん。どの料理も鮮やかな盛り付けがされており、まるで三ツ星レストランのそれだ。ソースで『式森様』なんて書かれた料理なんて初めて見たよ。しかも字が綺麗だし。
――けれど……。
「いかがなさいましたか?」
「あー、悪いんだけど、さ。そこに居られると食べられないんだけど……」
「ですが式森様の給仕がございます」
「うーん、でもねぇ、そこに居られるとマスクが取れないんだな。その気持ちはありがたいんだけど」
「失礼ですが、マスクを外すことは出来ないのでしょうか?」
まあ、普通聞いてくるよね。リーラさんの疑問も至極当然だ。
「残念ながらね。人前だと外せないのよ。人がいるところでは一度も外したことがないし」
「そうでしたか
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