第二話
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表情に変化はないのだが心なしか、しゅんと項垂れているように見える。
別に怒っているのではないので、その頭をポンポンと叩いてあげた。
「あー、いいよいいよ。別に怒ってるわけじゃないんだから気にしないで。心配してくれてありがとね」
「あ……」
顔を赤らめた彼女は俯き、口を閉ざした。
一頻り撫でたところで、ふと彼女の名前を知らないことに気がついた。そういえばまだ自己紹介していなかったなと今更ながら思う。
「君の名前はなんていうの? 俺は式森和樹っていうんだけど」
「はい、それは存じ上げております。わたくしは――」
「Housekeeper,Liera!」
後ろからの声にハッとした彼女は一瞬だけ振り返り、すぐに戻した。
「……敵が現れました。奴らの狙いはわたくしたちです。わたくしたちが囮になりますので、その間に脱出を」
「え……? あっ、おい!」
そう言うと彼女は背を向け駆け出した。その背はすぐに木々の向こうへと消え、残された俺は呆然とそれを見送った。
「……取り合えず、移動するか」
周囲を見回し人影がないのを確認して、近くの木に跳躍する。木の枝に飛び乗り直ぐに違う木へと跳躍した。武装した人間がいるなら安易に下の道を使わない方がいいだろう。こっちの方が見つかりにくいはずだしね。
それにしても――。
「Housekeeper,Liera……家政婦リーラ、か。やっぱり彼女の名前なのかな?」
そういえば彼女、メイドさんの格好をしていたな。あまりに似合っている上に完璧に着こなしていたから全然、疑問を持たなかったよ……。
「しかし、最近のメイドさんは武装をするのかねぇ。あの暫定リーラっていう女の人もワルサーを持ってたし。おお、怖い怖い……」
木々を跳び回ること三十分、ようやくジャングルを抜けた。視界が明けて目に入ったのは、石造りの城だった。
ディ○ニーランドにでも登場していそうな西洋の建物は堀や城壁こそはないが、いくつもの塔が天に向かって伸びている。南洋の孤島にはかなりミスマッチで、正直浮いていた。
「……まあ、なんでこんなところにお城が建っているのかは一先ず置いておくとして。んー、どうしよっかな」
こうまで堂々と建っていると、どことなく近寄りがたく感じてしまう。しかも醸し出される存在感が半端ないし。
なんていうか『ドーン!』とか『ズーン!』といった効果音がついているように見えるのは気のせいだろうか。
「でも、行かない訳にもいかないしなぁ〜。他に宿泊できそうな場所を探すのも億劫だし」
取り合えず、
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