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魔弾の射手
第三幕その一
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こう言った。
(御前とアガーテを地獄に誘う弾なのだからな)
 しかし心の中の言葉であるのでマックスには聞こえはしなかった。
「わかった。じゃあこれで決めよう」
「そうこなくちゃな」
 ここでマックスを呼ぶ声がした。彼はすぐにそちらに向かった。
「ふふふ、全ては計画通りだ」
 カスパールはマックスの後ろ姿を見送って悪魔的な笑みを浮かべた。
「これであいつとアガーテはザミエルのものになる。そして俺はこれからもこの世を楽しむというわけだ」
 ここで狐を見かけた。
「これでな」
 すぐにその狐を撃った。狐はもんどりうって倒れた。
「これはマックスとアガーテにやるとしよう」
 悪魔的な笑みのままそう言った。
「地獄への手土産にな」
 マックス達が森の中にいる時アガーテは自宅で婚礼の準備に取り掛かっていた。
 古く、質素だがそれでいて美しく装飾された部屋である。窓の側には花瓶がありそこにはあの白い薔薇がある。それは窓から入る太陽の光に照らされて白く輝いていた。
 アガーテはその中にいた。白い花嫁衣裳に緑のリボンを身に着けている。花瓶の白い薔薇の前に跪いていた。
「天におわします気高き主よ」
 彼女は薔薇に語りかけていた。
「今日のこの素晴らしい日を授けて下さったことを深く感謝致します。願わくば私とあの人に永遠の幸福をお授け下さい」
 それは彼女の深い信仰心から来る言葉であった。魔物が潜む暗い森の中にあって神の力はあくまで偉大なものであるのだ。
「私にあの人を、そしてあの人に私を。その御力でお授け下さい」
 最後にそう言うとゆっくりと立ち上がった。ここにエンヒェンが入って来た。見れば彼女も盛装である。
「ここにいらしたのね」
「ええ」
 アガーテは彼女に顔を向けて答えた。
「ではそろそろ行きませんか」
「その前に聞いて欲しいことがあるのだけれど」
「何でしょうか」
 おおよその見当はついていた。彼女の晴れない顔を見ればわかる。
「昨日の夢だけれど」
「いい夢ではなかった」
「ええ。私は白い鳩になって」
「いい夢じゃありませんか」
「それだけならいいのだけれど。あの人に撃たれてしまうの」
「それで!?」
 流石にそれを聞いてはエンヒェンも穏やかではいられなかった。
「けれどすぐに起き上がって。そのかわりに黒い大きな鳥が倒れていたわ。私は無事だったの」
「それは非常にいい夢だと思いますよ」
 そこまで聞いて安堵した顔で答えた。
「そうかしら」
「結婚の前の日に見る夢はこれからの生活の予兆です」
「それは前に聞いたけれど」
「雨蛙が天気を告げるのと同じで。それはきっと吉兆ですわ」
「それならいいのだけれど」
 それでもアガーテの顔は晴れない。見るに見かねたエンヒェンはそんな彼女に対して言
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