第二話 ギフトゲーム
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は、飯を食えない事に対する恨みは人一倍どころか十倍以上に強い。
その為、こんなことをした犯人捜しを真っ先にするのは当然であり、辺りをキョロキョロと何気なく見回していると、全員の視線がある一点に集中していることに気付いた。
「・・・・・・耀さん、一つお聞きしていいですか?」
「・・・・・・何?」
何やら上半身が虎の何者かの上に、春日部耀はその腕をホールドしながら乗っていたが、今はその状況説明よりも飯を台無しにしてくれた犯人探しの方が先だった。
「もしかして、この飯を台無しにしたの、そこの虎ですか?」
「うん」
犯人が一瞬で見つかった。それと同時に、再び「グゥゥ〜」と腹の虫が鳴り、勝は額に青筋を立てながら訊く。
「そこの虎、解体(ばら)して食べても良い?」
『えっ?』
耀と飛鳥、ジンだけでなく、その場に居た全員が思わず声を上げる。勝の温厚な見た目と似合わない言葉に、皆が驚いているのだ。
「だから、そこの虎を生きたまま包丁入れて火炙りにして食っていい?」
その言葉に、虎は顔面蒼白になり、耀は少し戸惑いながらも場違いなことを答える。
「お、お腹壊すと思う」
「そうか。見た目も不味そうですよね。残念」
この言葉はつまり、食べてもいいと言っている様なものだった。しかし、勝も腹を下すのは嫌なのか取り出していた折り畳みナイフをポケットに収め、不機嫌そうにもともと座っていた椅子に座り、そのままガクッと肩を落とす。
「朝飯また食えなかったどうしてくれるんだあのクソ虎解体して臓器と毛皮抉り取って市場で捌いちゃろうか?」
ブツブツと勝は恨みと怒気と殺意の籠った声でずっと愚痴を言い続けていた。その恨み言が恐ろしいがあまり、虎はこの場から立ち去るまでずっと顔面蒼白になりながら震えており、他の店内の客ですら勝と一定の距離を保ち続けていたという。
「お、お客さんー? ご注文通り、特大シチューとパンをお持ちしましたけど――」
虎が立ち去って数分後に、先ほどの猫耳少女がそう言いながら、右手にはテーブの半分くらいを使いそうな大きなシチューの皿が、左手にはそれの半分くらいの大きさのパンの入った皿が、それぞれ直されたテーブルの上に置かれていく。
それを聞いて見た瞬間、勝の先ほどまでの恨みと怒気と殺意の籠った独り言が嘘の様に消え、ニッコリと満面の笑みを猫耳少女に向けて、次の瞬間にはガツガツと料理を食っていく。
「・・・・・・美味しい。これで今日も生きていける・・・・・・!」
いや、お前は一体どんな環境で生きてきたんだ、とツッコミを入れたいカフェに居た全員だが、先ほどの勝の恐ろしさを見ては易々その様なことを言える筈がなかったのだった。
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