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魔弾の射手
第二幕その五
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四台の炎の車が通り過ぎた。御者は見えなかった。影に包まれていたからだ。だがそれが異形の者達であることはわかった。
「五つ!」
 カスパールの声はさらに恐ろしくなっていく。
『五つ!』
 それを繰り返す山彦の声も。まるで怪物の様であった。
 天から猟犬の吠える声が聞こえる。そして狩人達が駆ける。暗い天をだ。馬もいた。青白い、炎の鬣を持つ馬であった。その狩人達が叫んでいた。
「山を越えよ、谷を越えよ!」
 天にいる筈なのに地の底から聞こえてくるようであった。
「淵や山峡を越え、霧も雲も越えよ!」
 明らかに人の声ではなかった。
「空も沼も、裂け目も問題ない。火も岩も我等を阻むことはない。海や空も越えよ!」
「ヨーーーホーーー!ホーーーーー!ホーーーーー!ホーーーーー!」
 気味の悪い叫び声まで聴こえてくる。だがそれで終わりではなかった。
「六つ!」
『六つ!』
 カスパールの声は続く。彼は周りのことには目はいっていなかった。
 空がさらに黒くなる。谷の中を荒れ狂っていた二つの嵐は一つとなり、恐ろしい雷光と雷鳴が轟く。激しい雨、青い火が天と地を覆う。木々は雷に打たれて燃え上がり、嵐やその木や岩を砕き宙に運ぶ。大地も揺れた。
 マックスは一歩も動くことができなかった。ただその荒れ狂う様を見るだけであった。そしてカスパールは遂に最後の言葉を叫んだ。
「七つ!」
『七つ!』
 それで終わりであった。だがカスパールは最後に絶叫した。
「ザミエル!」
『ザミエル!』
 山彦も一緒に絶叫した。嵐が天空に舞い上がり、魔法陣の周りにた者達が消え去った。そして青い炎に包まれた魔界の住人が二人の前に姿を現わした。
「我を再び呼ぶか」
 青い炎が消えていく。中から先程カスパールが会っていたあの魔王が姿を現わした。
「ああ」
 カスパールはそれに答えた。
「約束通り頼むぞ」
「わかった」
 ザミエルはそれに頷くとマックスに顔を向けた。
「そなたか」
「はい」
 マックスは青い顔で答えた。
「その弾をカスパールより受け取るがいい」
「わかりました」
 彼は答えた。その言葉に従いカスパールから弾を受け取る。
「これでよし」
 ザミエルとカスパールは同時にそう言った。だがその表情が異なっていた。
 ザミエルは無表情であった。青い顔からは何も読み取れない。だがカスパールは酷薄な笑みを浮かべていた。だがマックスはそれには気がつかなかった。
「さらばだ」
 ザミエルはその弾丸がマックスに渡ったのを見届けると姿を消した。それを見たマックスは力尽きたようにその場に倒れ込んだ。
「恐怖に最後まで耐え切ったか。だがそれに力尽きたようだな」
 立ち上がったカスパールは彼を見下ろしてそう言った。
「息はあるな。もっともこの程
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