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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第60話 秋風の吹く魔法学院にて
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相応しかった七月(アンスールの月)が終わり、俺やタバサに取っては農作業に費やされた八月(ニイドの月)が過ぎ去ってから早くも一週間。

 九月(ラドの月) 、第二週(ヘイムダルの週)、虚無の曜日。

 今日はおそらく、俺がこのハルケギニア世界に召喚されてから百五十日目に当たる日付のはずですね。

 普段よりもかなり人影の少なく成った魔法学院内に吹く風は、妙な物悲しさのようなモノを運んで、俺と蒼き吸血姫(タバサ)。そして、キュルケの間を吹き抜けて行った。

 そう。一応は、志願制と言う形を取っている物の、ほぼ根こそぎ動員が掛けられているトリステインでは魔法学院の男性教師と男子生徒たちの大半が下士官として徴用され、秋と言う季節が持つ属性と相まって、普段よりも広く感じる教室が、広場が、そして、魔法学院そのものが物悲しい陰の気に沈んでいたのだった。

 尚、タバサが他国の戦争に参加しないのは当然として、キュルケが同盟国トリステインに対して義勇軍として従軍する事は可能だったとは思うのですが、どうやら実家からも、そして、祖国からも女性で有ると言う事を理由に彼女が従軍する事は認められなかったようです。

 もっとも、これは仕方がない事ですか。
 何故ならば、輸送に使われるのは飛空船。女性だらけの輸送船や、軍艦と言う物が存在していない限り、艦隊内の風紀を維持する事が非常に難しく成りますから。
 そもそも、戦いの前の高ぶった精神状態の時に直ぐ傍には若い女性。こんな状況に陥るのですから、敵であるはずのアルビオン軍と戦う前に、別の存在と戦う必要が出て来る可能性も有りますからね。

 流石にそれは問題が有るでしょう。

「本当に、戦争なんて直ぐに終われば良いのにね」

 異常に人口密度の低く成ったアウストリの広場を見回したキュルケが、そう独り言のように呟く。そして、その一言は、彼女にしては珍しく本心からの言葉で有った事は間違いなかった。
 もっとも、普段のやや好戦的な彼女から考えると、この台詞は彼女らしくない、と言う雰囲気で有ったのは間違い有りませんが。

 まさか、彼女の信奉者たちが戦場で活躍する為に徴用に応じて仕舞い、妙に人口(イケメン)密度の低くなった現状が寂しく成った……などと言う事はないとは思うのですが。

 尚、この場に居ても不思議ではない伝説の系統虚無を行使するピンク色の魔法使いと、彼女の使い魔で有る少年は、現在、実家のヴァリエール公爵家の方に帰省して居ます。その帰省の理由について、俺達に対して説明は為されてはいないのですが、おそらくはトリステインとアルビオンで起こる戦争への、彼女自身の従軍について許可を貰う為の帰省だとは思いますね。

 何故ならば、彼女は現在に蘇った始祖ブリミルで有り、彼女の使い魔の才
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