暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
妖精の園
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たよ〜。もう少し休もうよ」

「甘い!!サラマンダーの中に索敵スキルの高い奴が一人いたから、下手するともう見付かってるよ。二人じゃ次の空中戦闘(エアレイド)には耐えられない。根性でテリトリーまで飛ぶのよ!!」

「ふわーい…………」

レコンは情けない返事をすると、左手で宙を握る仕草をした。

その手の中に、半透明のスティック状のオブジェクトが出現する。短い棒の先端に小さな球がくっついたそれは、ALOで飛行するときに使用する補助コントローラだ。レコンが軽く手前にスティックを引くと、四枚の翅がふわりと伸び、僅かに輝きを増す。

それを確認して、リーファも自分の翅を広げ、二、三度震わせた。

こちらはコントローラを必要としない。ALOにおける一流戦士の証、高等技術の《随意飛行》をマスターしているため、その必要がないのだ。

「じゃ、行くよ!!」

低い声で叫ぶと、リーファは一気に地を蹴って飛び立った。背中の翅を思い切り伸ばして、梢の向こうに見える満月目指して急上昇する。風が頬を叩き、長いポニーテールを揺らす。

数秒で森を突き抜け、リーファは樹海の上空に飛び出した。視界一杯にアルヴヘイムの風景が広がる。途方もない開放感。

「ああ…………」

遥かな高みを目指して上昇しながら、リーファは法悦のため息を洩らした。この瞬間、この感覚だけは何物にも代えがたい。

泣きたいほどの高揚。いにしえの昔から、人間は空行く鳥に憧れてきた。そして、とうとう手に入れたのだ。己自身の翼を、この幻想の世界で。

システム的に課せられた滞空時間が恨めしい。心ゆくまで、どこまでも高く遠く飛び続けられるなら、何を犠牲にしても惜しくない。

もっとも、それはアルヴヘイムで戦う全てのプレイヤーの望みなのだ。

多種族に先駆けて、《世界樹》の上にあるという伝説の空中都市に到着し、真なる妖精《アルフ》に生まれ変わる───そうなれば、滞空制限は解除され、名実ともにこの無限の空の支配者となれるという。

リーファは、自分のステータス強化にも、レアアイテムの入手にも興味がない。この世界で戦い続ける理由はただ一つ。

今はまだ届かない金色の月を目指して、リーファは一回大きく翅を震わせた。

零れ落ちた光の粒が、彗星のような緑色の尾となって夜空に流れた。










「り、リーファちゃん〜、待って〜」

───という弱々しい声が下方から響いてきて、リーファの意識を現実に引き戻した。上昇を停止して見下ろすと、コントローラを握ったレコンが必死に後を追ってくる。補助システムを使用した飛翔は速度の上限が低いため、リーファが本気で飛ぶとレコンは追随できない。

「ほらもうちょっと、がんばれがんばれ!!」


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