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とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、看破する
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上、そういった出会い目的のプレイヤーは決して少なくない。
MMORPGにおいて女性アバターに積極的に話しかけてくる男性プレイヤーは、少なからず下心があると思っていいだろう。

「そんで、妹に無理言ってプレイさせてもらったんだが、まさかこんなことになるとは思わなくてよ……」
「な、なるほどね……」
そういった出会い目的の男性プレイヤーが妹さんに近付いてこないかどうか、アバターを借りて彼自ら確かめようとした、まさにその時に。
運悪くこのデスゲームが開始されてしまい、彼は妹さんのアバター───リリアとして、この世界で生きていく羽目になってしまったのだそうだ。現実の自分の顔で。

以降、『姫プレイ(可愛い女性アバターを使い、男性プレイヤーにアイテムや経験値を貢がせること)目的で女性アバターを使ってたネカマ』というレッテルを張られるのを恐れ、誰ともパーティを組むことなくソロで攻略に挑んできた。
ところが、第10層が突破されたあたりからソロに限界を感じ、職人クラスに転向しようと鍛冶スキルを鍛え始める。
材料は自力で調達し、死に物狂いで鍛冶スキルの熟練度を上げ続け、現段階では最高クラスの性能を誇る武器を作れるまでに至った。
とはいえ、大っぴらに店を構えれば、いつ自分の正体がバレるかわかったものではない。
そのため、目立たない場所を選んで露店販売を続けていた……が、噂が噂を呼んでしまい、『数少ない女性鍛冶師』として一部のプレイヤー間で有名になってしまった。
それ以来、リリアに会うことを目的とした客が増え続け、半ば嫌気が差していたところに僕たちが現れたということらしい。

なんというか……お気の毒に。

「っつってもまあ、大抵の連中は少し睨んでやったらビビって逃げ帰ったんだけどよ。オマエくらいだぜ、ここまでしつこかったのは」
「まあ、睨まれるのは慣れてるからね」
事実半分、嘘半分。
第1層攻略の時に向けられた敵意の眼差しに比べれば、彼一人に睨まれたところでどうということはない。
……というのは建前で、実際のところ、直前までのヘタレ具合が彼の本質だとわかっていたから怖くなかっただけだったりする。
口に出したらまた落ち込んじゃうだろうから、心の内に留めておくことにするけれど。

「だぁー、畜生。そんなに噂が広まってたんじゃ、そろそろ武器屋も潮時かもしれねえな」
「えー?りっちゃん、わたしの武器つくってくれないの?」
「りっちゃんって呼ぶんじゃねえ! ……ま、オマエの武器を作ってやるくらい別に構わねえけど。っつっても勘違いするんじゃねえぞ、ちょうど最後に何か作りたかったってだけなんだからな!」
そう言って、照れ隠しのようにそっぽを向くリリア。
これは……あれか。巷で有名なツンデレというやつなんだろうか。
ただし、相手は目付き
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