暁 〜小説投稿サイト〜
とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、看破する
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

地面に頭を押し付けながら『勘弁してください!牢獄送りだけは!』と懇願する彼の姿には、もはや最初に感じたイケメンの面影はどこにもなかった。
いやまあ、古来から土下座の文化があるかどうかは知らないけどね。
というか、謝るくらいならセクハラしなければいいのに……。

まあ、それはともかく。
アルゴに聞かされていた情報と、彼から聞いた話を合わせて、大体の事情はわかった。

曰く、このアバター名は彼が自分で名付けたものではなく、βテスターだった妹さんが使っていたものらしい。
彼は今年で24歳、妹さん───リリアのアバターの本来の持ち主は、僕と同い年の16歳。結構な年齢差のある兄妹だ。
両親は既に他界済みで、彼は歳の離れた妹を養いながら暮らしていたらしい。

そんなある日、妹さんがナーヴギアが欲しいと言い出した。
テレビCMで宣伝していたSAOの存在を知り、興味を持った妹さんがβテストに応募してみたところ、見事当選したのだそうだ。
普段色々と我慢させている分、たまには我侭を聞いてやろうと、半年遅れの入学祝いという名目で急遽ナーヴギアを購入。
妹さんは特にゲーマーというわけではなかったものの、VRMMOというまったく新しいジャンルのゲームはライトユーザーにとっても楽しいものだ。
のんびりながらも充実したβテスト期間を体験した妹さんは、正式サービス開始後もSAOを続けるつもりだった……と、そこまではよかった。

「俺が言うのもなんだが、アイツなかなか可愛い奴だからよ。ゲーム内で変な野郎が近寄ってくるんじゃねえかと思ってな……」

どうやら彼は、どこの馬の骨とも分からない男が可愛い妹に近寄ってくるのが許せなかったらしい(シスコン?)。
でも、まあ。確かに、彼が心配する気持ちもわからなくはない。
ネットゲームにはリアルが女性だと分かった途端、態度が急変するプレイヤーが多いからだ。

例えば、ゲームを始めたばかりで、右も左もわからない状態で街を歩いていたとする。
この時、男性アバターを使っていた場合、ほとんどのプレイヤーは見向きもしないで通り過ぎていく。
仮に自分から『すみません、レベル上げを手伝って頂けないでしょうか』と頼み込もうものなら、『は?そのくらい自分でやれよ』といった反応をされるのがオチだ。

ところが、これが女性アバターだった場合は話が変わってくる。
こちらから頼まなくても、『ねぇ君、初心者?よかったらレベル上げ手伝おうか?』と声をかけてくる男性プレイヤーが多く、更にパーティやギルドに勧誘されることすらある。
更に酷い場合は『彼氏いるの?』『リアル女?』などといったことを初対面の相手に聞いてくるプレイヤーまでいる始末だ。
流石にそこまで酷いのはそうそういないとはいえ、ネットゲームはオンラインというその特性
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ