裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、看破する
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の瞬間、
「ねぇねぇおにーさん、リリアちゃんって───」
「あぁ!?誰がリリアちゃんだコラァ!」
シェイリが何気なく口にした一言に、落ち込んでいたはずの彼が過剰に反応した。
「……え?」
「やべっ……」
僕がその態度に違和感を覚えたのと同時、彼は『しまった』という表情を浮かべ、再び黙り込んだ……けど、もう遅い。
彼が咄嗟に言い放った言葉を、僕は確かに耳にしてしまったのだから。
『誰がリリアちゃんだ』と言った彼の言葉は、まるで他人ではなく自分のことを言われているかのような言い方だった。
……というより、まさしく自分自身のことなんだろう。“彼女”にとっては。
「……なるほど。そういうことなんだ」
「げっ……!?」
表面上をどう取り繕おうと、やはり彼の本質はヘタレらしい。
その証拠に、僕がカマをかけるように言うと、彼はギクリとしたように表情を強張らせた。
なんともわかりやすい反応。自分から答えを教えているようなものだ。
ポーカーフェイスが要求される駆け引きには向いていないだろう。
そんな彼の様子を見て、僕は自分の推測が間違っていないことを確信する。
つまり、噂の鍛冶師の正体は───
「もう隠さなくてもいいよ、“リリアさん”」
「だああああ!キャラネームで呼ぶんじゃねえええ!」
彼のことで間違いないだろう。
────────────
「……その、なんだ。俺ってこんな名前だろ?表立ってパーティになんて入れやしねぇし、かといってソロで攻略するのもいい加減限界だったんだよ」
「それで鍛冶師に転向を?」
「そういうこと。自分の作った武器には名前が表示されちまうけど、俺が売ってたところで本人だとは思わねえだろ?こんな顔だし」
「まあね。正直、僕もそれは予想してなかったよ。まさか君がリリアだったなんて」
「そっからは必死に武器造りまくって、目立たねえ場所で売り捌いての繰り返しだ。で、ラムダが開放されてからはここに移った。この裏通りに巣食ってる連中の柄は悪いが、ひっそり商売するにはもってこいの場所だったんでな。あとリリアって呼ぶんじゃねえ」
「あ、ごめん」
「頑張った甲斐もあって結構いい武器も作れるようになったんだが、いつの間にか噂になっちまったらしくてなぁ。勘違いした野郎連中が『リリアさんに会わせてください!』とか下心見え見えな態度で近寄ってくるもんだから、気色悪りぃったらなくてよぉ」
「りっちゃんも大変だったんだねー」
「誰がりっちゃんだテメェ!揉むぞクソガキ!」
「コード発動させるよ?」
「ごめんなさい」
僕が開きっ放しだった警告ウィンドウをちらつかせると、リリアは即刻掌を返し、身体を前に倒して頭を床に擦り付けた。
日本に古来より伝わる最強の謝罪体勢。つまり土下座。
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