暁 〜小説投稿サイト〜
とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、看破する
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の質がいいとはいえ、こんな態度を取られればカチンとくる人もいるだろう。
しかも治安の悪い裏通りの、おまけにこんなに目立たない路地でひっそりと露店を出しているだけとなれば、売り上げは期待できなさそうな気がする。
そもそもこの人、リリア本人とどういう関係なんだろうか。

「それで、これを作ったリリアさんは……」
「ああっ!?リリアだぁ!?」
「!?」
うわ、びっくりした。
リリアの名前を出した瞬間、彼の態度が180度変わり、わかっていたけど驚いてしまった。
こうなることは事前情報で聞かされてはいたけれど、いざ目の前で豹変されるとドキッとするなぁ……。

「この子に合った武器が欲しいんだ。だから直接、本人に製作を依頼したいんだけど」
「チッ……」
苛立ったように舌打ちされてしまった。何がそんなに気に食わないんだろうか。
アルゴの話によれば、今までにリリア目当てで店を訪れたプレイヤーは、彼のこの様子に驚いて何も聞けずに逃げ帰ってきたのだそうだ。
確かに、急に怒声を上げた彼の顔は、もともとの目付きの悪さも相まってかなり怖い。
実際、本性がヘタレだと知っていた僕ですら一瞬驚いてしまったほどだ。

とはいえ、僕だってこのまま引き下がるつもりはない。
シェイリの武器を作らなきゃいけないし、彼女の人となりを調査するのはアルゴに頼まれたことでもある。
そして何より、散々セクハラされた挙句に小僧呼ばわりまでされて、何も聞かずに引き下がったら割に合わない。

「そういうわけだから、リリアさんを呼んでもらえないかな?店番を頼まれてるなら連絡は取れるよね?」
ちょっと強引かなとも思ったけれど、リリア本人と連絡を取れるとしたら彼しかいないため、ここはあえて踏み込んでみる。
情報収集にはこのくらいの図々しさも必要だろう、と心の中で自分に言い訳しながら。
アルゴの助手を務めるからには、この程度で遠慮していられない。

「………」
「……?」
と、また怒鳴られるのを覚悟していた僕は、彼の様子がおかしいことに気が付いた。
あれほど怒り心頭といった様相だった彼が、急に静かになってしまったからだ。

「……リリア、リリア、リリアねぇ……」
「……、あのー……?」
「そうだよな……リリアだよな……リリアなんだよなぁ……」
あれ、なんだかまた落ち込みモードに入っちゃったみたいなんだけど……。
再び暗いオーラを纏ってしまった彼は、僕が声をかけても心ここにあらずといったように、一人で何かをボソボソと呟いていた。
噂では彼はリリアの彼氏か何かで、彼女目当てで来た客を追い払ってるのではないかという話だったけれど……この様子だと、そうでもなさそうだ。
というか、彼女の名前を出されて落ち込む意味がよくわからない。何なんだろう?

と、次
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ