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くらいくらい電子の森に・・・
第二十章
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く、耳元で『タタタタ…』とはじけるような音がして、全身にショックが走った。
崩れ落ちる瞬間、僕に電気ショックを当てた男の顔を垣間見た。
「……あんたは……!」
僕を見下ろすその男の顔を睨みつけた。意識が呑まれる寸前まで、必死に……



鋼鉄のシャッターが下ろされるような轟音に飛び起きた。
視界に飛び込んできたのは、僕を気弱に見下ろす八幡の顔と、クリーム色の壁。ここがレントゲン室じゃないことは、すぐに察しがついた。
「防火シャッターの音、か。これでレントゲン室への道は閉ざされた、ようだね」
聞き覚えのある声に振り向き、睨みつけた。あの瞬間、僕に電気ショックをあてた男が、笑い皺一本乱さず、僕の真後ろで足を組んでいた。
「…伊佐木!!」
伊佐木は僕など見えないかのように立ち上がると、自動の給湯器に紙のカップを置いて小さなレバーを下げた。カップが、薄緑の茶で満たされた。
「紺野さんは…柚木は!?」
近くにいた八幡に詰め寄る。八幡は泣きそうに瞳を歪ませて目を逸らした。
「…見殺しに、したのか…!!」
「ごめんなさいっ…」
大粒の涙をこぼす八幡を突き飛ばして、部屋を飛び出した。『内科:第3診察室』と書かれたドアの向こうに、クリーム色の防火シャッターが立ちはだかっていた。
「くそっ!!」
無駄と分かっているのに、シャッターを殴りつけずにはいられなかった。さっきの痛みがぶりかえし、シャッターに拳の跡が赤く残る。
「やめて、傷が開いちゃいます!!」
八幡が、僕の右腕に飛びついた。そのまま抱え込むようにして、震えながら崩れ落ちる。僕も八幡に引っ張られるようにして、崩れ落ちた。
…右手には、血に染まった包帯が巻かれていた。八幡が巻いてくれたんだろうか。
「…戻るよ。離してくれ」
八幡は震えながら頷いて恐る恐る腕を離した。僕も、それ以上抵抗する気力は失せていた。
「あれから、どのくらい経った」
「…20分、くらいです」
「紺野さんたちは」
「…後のこと、頼まれました。ビアンキの停止は姶良さんしか出来ないから、フォローしてくれって」
診察室のほうから、ことり、とカップを置く音が聞こえた。少し間をおいて、しのびやかな含み笑いが響いた。
「このご時世に被爆とは、実に興味深い、死に様だね」
「何だと…!!」
頭にかっと血がのぼった。
「あんたの馬鹿げた隠蔽工作のせいで紺野さんも柚木も死ぬことになったのに、どのツラさげてあの人を笑えるんだよ!!…烏崎達だって杉山さんだってそうだ。あんたさえ居なければ!!」
「じゃ、私を殺すかね?…事後のことは、私が託されているというのに」
紺野さんの遺言まで逆手にとって…!やり場のない怒りで体が震えた。奴は相変わらず笑い皺一本崩さず、カップを口元に運ぶ。背後で、八幡の忍び泣きが聞こえた。
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