第二十章
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爆してるんだよ!!」
「えっ…!!」
少しの沈黙のあと、何か硬いものでドアを連打する音が聞こえた。その間も、パソコンは、2人のレントゲン画像を大量に受信し続けている。…2人はもう、どれだけ被爆したのか…考えるのが怖くて、とにかく夢中でドアを引っ張り続けた。
「うそ…全然開かないよ!」
柚木の泣き声交じりの声が、胃を締めつける。…ドア一枚隔てて、柚木の命が削られ続けているのに…僕には何も出来ない。
「くそっ…ドアが重い!」
指から血が滲むほど、ドアノブを引っ張った。掌が血と汗で滑ってうまく握れないのに、何度でもドアノブに組み付いた。…そうしないと、気が狂いそうだった。内側からドアを打つ鈍い衝撃が手首を痺れさせたけど、痛みは感じない。痛覚はとっくに麻痺していた。
「放射線を遮断するのに、鉛が使われてるらしいぜ…打ち破れねぇよ」
しばらくして、どさり、と身を投げ出す音と共にドアを打つ音が止まった。
「紺野さん!?」
「な、なに諦めてるんだよ…一番命汚そうな顔して!!」
情けないほど声が震えた。何度も、素手でドアを打った。冷たくて分厚い鉛の感触だけが、拳に跳ね返る。ドアの内側から、さっきより弱々しくドアを打つ音が返ってきたけど、十回くらいで止まって…そのあと、小さいすすり泣きが聞こえてきた。
烏崎達に追われたあの夜、耳の後ろで聞こえた小さなすすり泣きと同じだ。
違うのは、僕には本当に何も出来ないということ。…傍にいることさえ、出来ない。
……柚木……!!
カシャカシャカシャ…紺野さんの、柚木の命を少しずつ蝕むシャッター音が止まらない。
ビアンキ。
なぁ頼む。この人だけはやめてくれ、この人だけは…!!
無駄なことと分かっていながら、混乱する頭で何度も繰り返した。この人だけはやめてくれ、この人だけは、殺さないでくれ―――
「―――お前、先に行け」
「行ってどうするんだよ、僕1人で何が出来る!?」
声が裏返った。…そうだ、僕は『紺野さんがいるから』ここに来られた。僕は無力で、ぶざまで、相変わらず弱くて…さっきから混乱するばかりで、少しも先に進めない。
駄目だ、これ以上混乱するな!考えろ、2人をここから出す方法はないか!?
「…持って行け。必要な指示はハルがする」
ドアの下から、紺野さんの携帯が滑り出てきた。
「待てよ!もっと考えよう、なにかいい方法があるはずだよ!」
「ねぇ、姶良」
僕の声を、柚木が穏やかに遮った。…いつしか、すすり泣きは止まっていた。
「同じ場所に留まる時間が長引けば長引くほど、危険が迫ってくるんだよ。考えてる時間なんて、もうないんだよ、きっと」
「でも置いていくなんて!!…柚木は、僕の…」
喉が詰まって、続きが出てこなかった。柚木は、僕の…初めての…。
柚木も、何も言わなかった。ドア
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