第二幕その九
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「しかしそれを私が恨んでいると思ったら間違いだと。夢にも思わないと」
「負け惜しみだな」
「そうですね」
男爵と秘書はそれを聞いて囁き合った。
「それ以外の何者でもありませんな」
「全くだ」
「最後に王子は言い残しました。あの人と一緒になればいい。御似合いだと。そう言い残して風と共に去ってしまったのです」
「あら、そうですの」
自分のことを言われているとわかっているので内心思うところがあるにしろそれを隠しているハンナであった。まるで鷹の爪のように。
「残念なことです」
「それでは私も王子に倣い」
さっと身を翻してきた。
「これでお邪魔しましょう」
「あら、どちらへ」
ハンナはそれに問う。ダニロはシニカルに笑ってそれに応えるのであった。
「馴染みのマキシムへ。では」
「ではって閣下」
男爵が何とか止めようとするがダニロの動きは速かった。瞬く間にその場を後にしたのであった。
「全く。気紛れなのだから。何とかしなければなりませのね」
「そうですわね」
張本人のハンナがそれに応えてきた。
「ここは何としても」
「あの、奥様」
流石に今の言葉には呆れて男爵は言ってきた。
「それはですね。貴女のことなのですが」
「実はですね、私」
彼の言葉を無視して言ってきた。聞いてはいない。
「そのお話の本当の最後を知っているのです」
「別れで終わりではなかったのですの?」
「はい」
にこりと笑って男爵夫人に答える。
「その結末が書かれている本はパリのある場所にあります」
「それは一体!?」
「何処なんだ!?」
「そもそも話がずれてきていないかな」
四国の者に混じって完全に蚊帳の外に置かれてしまっていたカミーユが呟く。
「僕のことは一体」
「貴方のことはなかったことにしましょう」
男爵はさりげなく無茶苦茶な提案をしてきた。
「それで如何でしょうか」
「如何も何も僕にも何が何だか」
「さあ皆さん」
ハンナは彼をよそにその場にいる一同に声をかける。
「マキシムへ。いざ」
「畏まりました」
「それでは」
何はともあれお祭り騒ぎの場はマキシムへ移ることとなった。これはこれで大騒動となるのであった。しかし楽しい大騒動でもあるのだった。
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