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久遠の神話
第四十一話 鍛えた結果その五

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 それでだ。声はこう言ったのだった。
「何でもありません。ただ」
「ただ?」
「貴方が戦いを止められたいならばです」
 それならばだというのだった。
「それはそれでいいのです」
「本当に仰る意味がわからないですけれど」
「ならいいです。では」
 こう言ってだ。声は。
 急に消えた。後には怪訝な顔のままの上城だけが残った。
 次の日彼は登校中に樹里に声とのやり取りのことを話した。そうしながら登校していた。
 それを聞いてだ。樹里はこう言うのだった。
「あの声の人って女の人だったのね」
「それはわかったよ」
「ううん、そうだったの」
「前から声の色とかでそうじゃないかって思ってはいたけれどね」 
 だが確かな証拠はなかった。それで断定はしていなかったのだ。
「けれどね」
「それでも昨日のお話で」
「それはわかったよ」
「そうなのね。じゃあ」
「うん、そのことはわかったけれど」
 だがだと言う上城だった。
「それでもね」
「他のことはなのね」
「あまりわからなかったよ。けれど僕の戦いはいいんだって」
「戦いを止める為の戦いは?」
「そう、それはいいんだって」
 そう言われたこともだ。上城は樹里に話した。
「何か。もうすぐだからとか言って」
「もうすぐって」
「何か抽象的でね」
 声の言っていることがわからないのでだ。上城はそれはそうではないかと推察下。だがそれは違っていた、声は全てを話していないだけだった。
 それでだ。上城はその彼が思う抽象的なことを言うのだった。
「わかりにくくて」
「じゃあわかったのは」
「それだけ。ほんのちょっとだよ」
「声が女の人で」
「うん、僕の戦いもまたいいんだって」
「それじゃあ。私の聞いた限りだけれど」
 だがそれでもだというのだった。樹里はここで。
「上城君は戦って」
「戦ってそれでなんだね」
「ええ。それで剣士の戦いを止めて」
「止めるというよりかは。この戦いを終わらせることをお願いするんだね」
「そうしたらどうかしら」
 これが樹里の提案だった。
「声の人もいいっていうんだし」
「そうするべきかな」
「どちらにしても上城君達は戦いを止めたいのよね」
「何にもならないからね」
 無益な、そうした戦い故にだというのだ。
「だからね」
「そうだね。それじゃあ」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「気をつけてね。死なないでね」
「そうだね。戦いを終わらせる為にはね」
「最後まで生き残らないといけないから」
 このことは絶対だった。まさに。
「それは気をつけてね」
「うん、僕は生き残るよ」
「けれど逃げないわよね」
「逃げることはしないよ」
 上城はこの考えは捨てていなかった。彼の信念であるが故に。
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