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万華鏡
第二十三話 大阪難波その五

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「夏野菜たっぷり入れるからね」
「お肉は?」
「鶏肉入れるわ」
 肉はこちらだった。
「低カロリー高タンパクだからね」
「鶏肉なのね」
「そう、とにかくどんどん食べなさい」
「ええ、あと御飯は」
「ああ、そっちね」
「今炊いてるの?」
「お米といでさっき入れたわ」
 電子ジャーにそうしたというのだ。
「ちょっと待ってね」
「白い御飯よね」
「十六穀よ」
 こちらだった。
「それにしたのよ」
「やっぱりあれ?夏バテの為に」
「勿論よ、だからよ」
 それにしたというのだ。
「とにかく栄養を摂らないとね」
「何かお母さん夏はいつもそう言うわね」
「当たり前よ、夏バテになったら後が辛いから」
「だから夏はしっかりと」
「そう、お野菜にお肉をたっぷりと食べてね。後は」
「後は?」
「食べる時は汗をたっぷりとかくのもいいの」
 俗に言われることだが母は娘にあえてこう話した。
「だからカレーも作るし後は鍋も考えてるから」
「鍋ってどんな鍋なの?」
「すき焼きよ」
 そのものずばりだった。
「安いお肉だけれど牛肉にお葱、お豆腐と茸をたっぷりと入れてね」
「あと糸蒟蒻もよね」
 すき焼きにはこれも欠かせない。
「とにかくすき焼きね」
「そう、オーストラリアの牛を使うから」
「あの国のなのね」
「安くて美味しければいいのよ、あと安全だったら」
「どの国のでもよね」
「どの国の食べ物が駄目とか言ったら何も食べられないわよ」
 彩夏の母は少なくとも排外主義者ではない、少なくともネトウヨ的な偏見や排他的な思考は持っていないのだ。
 だからそれでこう言ったのである。
「美味しくて安い」
「そして安全」
「素材はこの三つを見ればいいのよ」
「そうよね、お米だって」
「ただタイ米は和食には合わないから」
 それが問題だ、タイ米は炒飯やカレーには合うがだ。
「間違っても納豆とかと一緒には食べられないからね」
「うん、如何にも合いそうにないわね」
「けれど今日は十六穀だからね」
「身体にいいからよね」
「麦とか稗も身体にいいのよ」
「昔はそれって貧しい食事だったらしいけれど」
「それでも身体にいいものはいいのよ」
 雑穀と呼ばれるものでも身体によければいい、彩夏は内心母のその言葉に光るものを見て今後の参考にしようと思った。
「だからね」
「食べるのね」
「白米だけ食べたら駄目なのは知ってるわよね」
「ええ、森鴎外ね」
「脚気になるから」
 ここでもこの話をするのだった。
「注意してね」
「脚気って今頃なるのね」
「気をつけないとなるわよ」
 それこそ白米だけだというのだ。
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