霧の森
無罪主張
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これでも高待遇な方らしい。通常は天井に入り口があって梯子などを使わないと行き来できない作りになっているが、この牢は入り口が木のドアであり天井付近には換気用の窓もある。それでもこの牢は3畳ほどの広さではあるが。
その牢に片隅でセリナは両手を後手で締められ簡素な貫頭衣を着せられ、縮こまっていた。
「カズヤ……。」
この世界でできた唯一の友人にして同居人。そして同年代ではあるがこの世界の先輩。彼女は彼に頼らなければ生きていけないほど依存していた。
孤独と空腹にさいなまされ、誰も来ることのないこの牢に縮こまるほかしようがなかった。
「カズヤ…、どこにいるの?」
「おい。メシだ。」
声とともにドアが開けられ盆を持った男が入ってきた。
「クスィー伯には感謝することだな。お前の連れをひどく気に入っているからこんな待遇出されるんだ。ありがたく思え。」
盆を牢の片隅に置き出て行った。盆の上には一本のバゲットとミルクが乗っていた。しかし食べたくなかった。カズヤと一緒にわいわいしながら食べたかった。それが牢屋の中であっても。
「う、ううぅ……。」
どうしようもなく泣きたくなった。彼は余計なことをすることが多いけどそれでも大切な仲間だった。
寒い。気温ではない。自分の心が寒い。さみしい。
「カズヤ…、助けて……。」
その日の午後、彼女は解放された。5枚の金貨と手紙を持って。
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