第二幕その四
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第二幕その四
「あの」
しかしその前にそっと男爵の方を見る。ダニロもそれに気付く。
「左様ですか。それでは」
彼も男爵に顔を向ける。そのうえで言う。
「卿は少し席を外してね」
「わかりました。それでは」
「うん」
こうして男爵は席を外し二人だけになった。周りはもうめいめいで勝手にやっているので誰も二人に顔を向けない。騒がしいが二人にとっては秘密の話にいい場所になっていた。
「それで。何でしょうか」
「私、実は」
ここでダニロの顔を見る。
「結婚を考えていまして」
「ほう」
ダニロはそれを聞いて声をあげる。
「それはどなたでしょうか」
「貴方もよく御存知の方です」
(上手く言ったものだ)
ダニロはその言葉を聞いて内心呟く。
(確かによく知っているな)
「私もですか」
しかし本心は隠す。そうハンナに問い返す。
「左様です。だからこそ御聞きしたいのです」
「それでは貴方の忠実な友人として」
仮面を被って言ってきた。
「その方とのことについて御聞きしましょう」
「妬かれないのですね」
「別に」
(何故妬く必要があるんだ)
また心の中で呟く。
(馬鹿な話だ)
(わかっている癖に)
ハンナも心の中で呟く。
(馬脚を現わさないというのならそういう風に仕向けてあげるわ)
そう言ってまた攻撃を仕掛ける。またダニロに言う。
「それでですね」
「はい」
「再婚前に考えていることがありますの」
今度はこう言ってきた。
「実はこのパリをよく見回りたいのです」
「ではいい地図を差し上げましょう」
「いえ、地図ではなく」
それは断ってきた。
「ガイドを紹介して頂きたいのですが」
「ああ、それなら簡単なことです」
ダニロは笑って応えてきた。
「フランス人でよく御存知の方が」
「私フランスの方は」
「御嫌ですか?」
「口には出せませんが」
嫌というわけである。勿論本音も何処となく含んでいる。
「ふむ。それでは」
「どなたですの?」
「我が国の大使館に詳しい者が幾らでも」
「それではですね」
応えながらダニロを見てきた。
「それも閣下に教えて頂きたいのですが」
「おや、そちらまで」
「如何でしょうか」
じっとダニロを見て問う。
「それで」
「悪くはありませんがただ」
「ただ?」
「まあ何です。ゆっくりお話しましょう」
いいムードになったところでそれをあえてかわしてみせた。ハンナもそれを感じて内心あまり面白くはなかったがやはり顔には出さない。
「そうですか。それでは」
「ええ」
「まあワルツでも」
ダニロはまた踊りに誘う。
「如何でしょうか。四分の三拍子に合わせて」
「合わせて?」
「貞節もそれだけ忘れて」
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