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前略、空の上より
第四話「RG−T(下)」
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 ターボ・モードから通常モードに切り替えたRG‐Tは無人の廊下を出て外へと続く階段を降りる。あえて飛行機能をつけていないが段差の昇降くらいは可能だ。


 三十秒ほど要しながら十段の階段を降りる。一段一段せっせと降りる姿に胸が温かくなった。


「標的を発見。これより撃破します」


「むっ、今度はイカロスか」


 外へと繋がる扉の前に立ち塞がったのはピンクの髪の少女、無口無表情キャラでお馴染みのヒロインことイカロスさんだった。


「半永久自動追尾対空弾アルテミス、発射準備――」


 ある程度の拡大や縮小が行える可変ウィングをバッと広げたイカロス。その目は深紅に染まっていた。戦闘形態である空の女王(ウラヌスクーイン)モードだ。ガチじゃん。


「――完了。発射」


 大きく広げた翼から次々と対空弾が発射される。


「くっ、障壁プログラムは……あと一分三十秒! チィッ!」


 自動回避システムが起動しているため紙一重で避け続けているが、このままではジリ貧だ。奇妙な踊りのように手足や身体を動かして追尾弾から逃げ惑うロボは一旦距離を取ると、カシャッ、と小気味良い音を立てて胸部をスライドさせた。


「そっちがそれならこっちはコイツだ! 行けぃ、MRたちよ!」


 胸部の排出口から小型ロボたちがわらわらと姿を現す。


 全長二センチ、重量三キロ。RG‐Tを縮小した小型ロボット【Micro Robot】だ。彼らはRG‐Tをボスと仰ぎ、彼の出す指令なら忠実に守る。


 RG‐Tは身振り手振りで指令を下すと、MRたちは自ら死地へと向かっていった。


 ある者は自ら追尾弾へと身を晒し、


 ある者は身を楯にしてボスを守り、


 またある者は果敢にもイカロス(敵)へと立ち向かう中、味方の爆発に巻き込まれる。


 どこか涙を誘うような悲壮感溢れる現実が画面の向こうに存在していた。


「すまない、皆……っ!」


 涙を呑んでRG‐Tを戦線から離脱させる。散って行ったMR(友)たちにしてやれることと言えば、逃げ続け、生き続けることだった。


 スピードを上げて外へと向かう。


「逃がしません」


 回り込まれた。


 RG‐Tは逃げられない!


「目標を破壊します」


 拳を振り上げるイカロス。障壁を張れない今、拳一つでも致死レベルだ。俺は急いで画面に指を滑らせた。


 外部音声を接続して回線を繋げる。


『待つんだ、イカロス!』


「……マスター?」


 ロボの眼前で拳を静止させたイカロスは首をカクンと傾けた。あっぶねぇぇぇぇ! 間一髪だったよ!

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