第四話「RG−T(下)」
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あっという間も無く廊下の角を曲がり、そのまま長い通路を走破した。
迷路のように入り組んだ道を駆けまわり、すれ違うオレガノたちの横をビュンッと通り過ぎる。
しばらくして漸く速度を落とした。周囲に人影はなく音声周波数にも反応はない。どうやら上手く撒けたようだ。
「あー、どうすっかなぁ……。エンジェロイドたちには伝達が回っているだろうし」
エンジェロイドたちにとってタナトスは心の母である。その温和な雰囲気や包み込むような優しい気質に多くのエンジェロイドが彼女を母と、姉と呼び慕う。
地位的には圧倒的上位に立つ空人でさえ彼女には強く出れない。なぜか母と子、もしくは姉と妹、弟のような関係に治まってしまうのである。
温和な彼女は普段から怒ることはあまりなく、アストレアがちょっかいをかけても窘める程度にとどめる。
しかし、そんな彼女でもただ一つ、許せないものがあるらしい。
主を侮辱されること、同朋を侮辱されること、食料を粗末に扱うこと――
そして、女性が傷つけられることだ。
元来、男は女を守るもの。守るべきものに手を上げるなんて本末転倒、紳士失格。
特に顔と髪は乙女の命らしくケアも欠かしていないとのこと。この手の話に疎く無頓着なイカロスやアストレアなどに、乙女としての心構えと手入れが如何に大切かという説教染みた話を延々としたこともあるくらいだ。
イカロスやアストレア、オレガノたちのスキンケアを喜々として行い、比較的ミーハーなニンフやハーピーたちに己の技術と知識を伝授する。そんな彼女に向けてあの暴挙は、もはや自殺行為に等しかった。
「なーんであんなことしたんだろうなぁ……」
しかし、今更後悔してももう遅い。後の祭り、後悔先に立たずである。
ほとぼりが冷めるまで逃げ回るしかない。どこかでジッと身を隠したり、素直に謝るといった選択肢は浮かんでこない俺であった。
「見つけたぁぁぁぁぁ!」
「げっ! アストレア……!?」
振り向くと鬼のような形相をしたアストレアが地面スレスレに滑空しながら迫って来ていた。その手にアストレアの唯一の武装である超振動光子剣『クリュサオル』を握りしめて。
アストレアのクリュサオルはとにかく『斬る』ことに特化している。そのため、イカロスたちの武装に比べるとやや有効範囲が狭く扱い辛いという欠点はあるが、その威力はイージスを易々と切り裂く。
障壁も先程使用してしまったため使おうにも使えない状況だ。アレは一度使ったら五分間のインターバルを挟まないと使用できないのだ。
「あんなので斬られたら、RG‐Tの紙装甲じ
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