第四話「RG−T(上)」
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隔操作のために頭にはアンテナも設置している。
幼少の頃の俺はロボットを自作することが夢だった。男の子なら誰もが皆興味を示す物。取り分け、俺の関心を引いたのがロボットだったのだ。
しかし、所詮は子供の頃の夢。時が経つに連れて段々とあの頃に抱いていた熱は冷めていき、いつしか『ロボットを作る』という夢そのものを自分でも忘れていた。
だが、なんの因果か、ピーターに憑依するという訳の分からん事態に陥ってしまった今、嘗ての夢を思い出したのだ。
幸い俺には夢を実現させるための知識も技術も設備も整っている。なら、持てる力のすべてを費やし、最高のロボットを作ろうじゃないか!
「――で、出来たのがRG-1、と」
遠隔操作型のため俺は小型立体スクリーンを虚空に投影しながら、自室からロボを操作していた。
RG-1の目には小型カメラが搭載されており、随時ロボが目にしている光景をスクリーン越しから確認することができる。しかも小型マイクも内臓されているため周囲の音を拾うことも可能だ。
「では早速、最終動作テストを開始する」
誰に言うでもなく独白した俺は立体スクリーンを手元に投影した。これがRG‐Tの専用コントローラだ。馴染みのキーボードを模して作ったためスクリーンには『A』から『Z』、『Space』、『Enter』、『Fn』、そして『↑、↓、→、←』の方向キーが配置されている。
「RG‐T……始動!」
『W』を押すと、RG‐Tは静かに前進した。シナプスの技術を結集して作り上げたため、ロボ特有の駆動音も聞こえない。
歩く、走るといった基本動作は勿論、片足立ちや屈むなどの高度な動作も可能である。
絶妙のバランス感覚を如何なく発揮し、そのまま倒れることなく研究室から出る。
一旦、静止させて方向キーの『→』を、そして『←』を押した。
「――カメラアングル、正常稼働……視界良好」
ロボの首を回すとスクリーンの画面も連動して景色が流れた。カメラが正常に稼働している証拠だ。
このカメラを使い、皆の私生活を覗き見ることが、RG‐Tにかかせられた任務である。
「ふんふんふ〜ん♪ 今日のご飯はなにかな〜♪」
どこからか脳天気な声が聞こえる。スクリーンの横に表示されている音声周波数を確認し、廊下の角から声が聞こえいるのだと推察した。
「音声感度もクリア……この声はアストレアか」
ロボを前進させて角から頭を覗かせる。複雑極まりない動作でもボタン一つで簡単操作、初心者に優しい設定となっている。
陽気に鼻歌を歌いながら、アストレアが丁度向かいから来たところだった。
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