第一幕その一
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第一幕その一
第一幕 まずははじまり
パリにあるポンテヴィドロ公使館のサロン。二つのホールが奥にありみらびやかな光に照らされたこの部屋において今華々しい顔の面々が笑顔でいた。それぞれドレスやイブニングで着飾り楽しく談笑している。
「いと楽しき紳士淑女の方々」
着飾った踊り娘の一人が言う。赤いみらびやかなドレスを着ている。
「この度は皆で祝いましょう」
「はい」
その中の一人である黒い髪と瞳の男が述べる。端整な中年の男だ。彼の名をツェータ男爵という。パリにおいても中々の名士である。絹のイブニングを着ている。
「さあそれでは」
踊り娘達はまた言う。
「男爵の為に乾杯を」
「さあシャンパンを」
「いえ、皆さん」
ところが男爵はここで言うのだった。
「今宵は我が陛下の為」
実は彼はフランス人ではない。ポンテヴェドロ公国の者だ。欧州の小国の一つでありスラブ系の古い国だ。伝統的にオーストリアとロシアの強い影響を受けている国である。
「ポンテヴェドロ公国の者として公爵の誕生日を祝いましょう」
「おお、それでは」
「皆で」
踊り娘達もそれに応える。そうして言うのだった。
「乾杯を」
「ポンテヴェドロ公爵に」
「乾杯!」
皆ここで乾杯する。男爵はそれを見て笑顔になる。
「どうもどうも。ところで」
男爵はふとあることに気付いた。
「家内はどちらへ」
「奥様ですか」
「はい、姿が見えませんが」
男爵はそう客人の一人に述べる。見れば黒い髪と目の東洋人の客人である。言葉の訛りから日本人であることがわかる。
「どちらに」
「あれ、先程までおられましたが」
日本人はそう答える。
「そういえばおられませんね」
「お酒を楽しまれているのでは?」
やけに大柄で顔の赤い男が出て来た。ロシア大使館からの客人である。言うまでもなくこの場においても酒を大いに楽しんでいた。
「今宵もまた」
「いえ、家内はお酒は」
しかし男爵はそれを否定する。
「お酒は」
「ああ、そういえば」
もう一人東洋人が出て来た。切れ長の目をしてすらりとした身体をしている。彼は日本人ではない。中国人である。彼も呼ばれているのだ。
「ロジョンさんとお話をされていましたな」
「ふむ、それはいけませんな」
金髪で青い目の明るい雰囲気の男がそれを聞いて怪訝な顔をわざと作ってきた。彼はアメリカ人だ。何と四国の客人が呼ばれもしないのに来ているのだ。呼ばれたのは日本だけだが後の三国は呼ばれもしていない。しかしいるのが彼等らしいといえばらしい。
「閣下、若しかすると」
「いや、それはありません」
しかし男爵はそれを一笑に伏す。
「我が妻に限ってそんなことはありません」
「そ
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