拠点フェイズ 1
劉備・関羽・張飛
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だったのは……
(俺は向こうの世界に未練がないんだ……)
そう。
別に向こうの世界が嫌だったわけではない。
アーカムでいろんなことを学び、いろんな人たちに出会い。
そして古代の遺物や遺跡を実体験で学んでいく喜びもあった。
だが――
(だが、俺はあの世界でなにがしたかったのか――)
一刀と共に生き、スプリガンとなり、多くの遺物を封印する。
それが俺の生きがいになる、そう思っていたのだが。
(この世界にきて、一刀が生き返り、目が覚めないとはいえ今は落ち着いている)
そのことで、やっと余裕が生まれたのだろう。
最近、自分はこれからどうしたいのかを考えてしまうのだ。
だが、いつも考えるたびに思うことは……
(一刀がいる以上、向こうに未練がない)
向こうには先輩たちがいる。大槻もいる。
ティアさんや朧や山本さん――知り合った友人、知り合い、仲間がいる。
それでも。それでも俺は……
(向こうの世界より……この世界に惹かれているのか)
なにせ千八百年以上の過去である。
スプリガンの誰も――向こうの世界の誰も来たことがない世界。
そこに俺と一刀は立っている。
しかも、歴史の英雄達の傍に。
(俺は……劉備に会い、その人徳に魅せられたのかもしれない)
向こうの世界ではいつか見つかるかもしれないと思っていた。
自分の生まれた意味。そして、生きる意味。
(たとえそれがなかったとしても……創りたい。生まれてすぐ、捨てられた命だからこそ)
それが俺と一刀が誓った約束。
(だれかに……勝手に産み落とされた命。意味も価値も……与えられることもないままに)
それでも、それでも俺たちは、死ぬ前に何かを残すために生きる、と――
「にゃあああああああ! よけてーーーっ!」
「!?」
風を切る音と一瞬の悪寒に、身体が勝手に反応して伏せる。
と、俺の頭上をものすごいスピードで通り過ぎていく、一条の矢――いや、矛。
先程まで頭のあった位置には、鈴々の丈八蛇矛が、柱に食い込むように刺さっていた。
「あ、あぶなぁ……」
「にゃああ、だいじょうぶかぁーっ!?」
鈴々がこちらに走ってくる。
手に何も持ってないところを見ると……すっぽ抜けたか。
「あ、ああ。大丈夫だけど……ちゃんと持ってなきゃ危ないだろう」
「にゃあ、ごめんなのだ。ちょっと手が滑ったのだ」
鈴々がすまなそうに頭を下げる。
俺はため息をつきつつ、その頭をなでた。
「にゃ?」
「まあ、気をつけてくれよ。俺だったからよかったけど、侍女の人とか文官の人じゃ当たって大怪我してたんだから」
「うん。気をつけるの
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