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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十一話 皇位簒奪 雷速剣舞
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るでしょう。ですが、貴方の事は他の人たちに比べて明らかに脅威を感じません」
そう螢は断言した。だがその内容はカリグラにとって怒りの琴線に触れるものだった。
「何だと……お前は、お前も俺がアイツに…アルフレートに劣っていると、ふざけた事を抜かすのか!」
貌には怒りが満ちており、剣を握っている手も力を込めていることが明らかだった。カリグラにとってアルフレートは少なからず憎悪の対象であった。自らが信奉する力という面での理想形の体現者であると同時に、自らを駒として扱う事に不満を抱いている。
アウグストゥスもパシアスも盲信しており、ティベリウスはアルフレートを見ていない。クラウディウスやティトゥスなどは敵だと認識している。
そんな中でカリグラは純粋に超えるべき存在であると妄執していながら下に仕える人間である以上、比較すらされない。故にカリグラは自らがアルフレートに勝っていることを証明する事に固執する。それが彼の本質の一端であるから。
「俺は奴を殺した。なら俺の方がやつよりも上だ!お前に否定されるいわれはない!!」
「後ろから刺し殺すような卑怯な真似しか出来ないのに」
「貴様ァ!!」
カリグラは怒りに身を任せ、櫻井螢を殺そうと剣を振り下ろす。螢はそれを剣で弾きながら後ろへ跳ぶことで威力を減衰させた。
追撃するカリグラ。剣戟は幾度となく繰り返される。横に振り払った剣は伏せて躱された。カリグラはそのまま居合いのように剣を引き抜く。しかし、その一閃は螢が伏せた状態から切り上げるように放った剣戟によって弾かれる。
薙ぎ、突き、振りかぶる。だが、次々と放たれるカリグラの連撃は総ていなされるか躱されていった。
「何故だ!俺に遥かに劣っている貴様が、何故俺の攻撃をくらわないッ!!」
「簡単ですよ。貴方はそれを使いこなせてないんでしょう」
螢の言ったその解は、単純だが聖遺物の使い手にとって致命的な欠点だった。螢の攻撃を単純に受け止めていたことも、カリグラの連撃を螢が防ぎきれていたのも彼自身が聖遺物を使いこなせていないのが原因である。
「藤井君や遊佐君ほどの才能なんてそうそうあるわけ無いわよ。私もそうだったもの。聖遺物って、使いこなせるようになるまで随分時間が掛かるものだし。それにあなた、剣での戦いは苦手?」
カリグラは戦闘に使う聖遺物を今まで持ちえたことが無い。それは彼の聖遺物を奪うという能力の都合上、早々使える相手がそうそういなかったこともある。
更に言えば、カリグラの本来の得物は小剣、小銃の類であり、カインが持つような大剣ではない。
黒円卓の
(
ヴェヴェルスブルグ・
)
聖槍
(
ロンギヌス
)
はカリグラ自身が櫻井の一族、若しくはそれに順ずる者では無いため形を変えようともせず、未だにその形を大剣として保っている
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