第九十一話 ヴィンドボナの日々
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似をして工業化を進めることがあれば、ゲルマニアの工業化を阻害させる可能性がある為、ツェルプストー辺境伯領が喉から手が出るほど欲しがった。
「マクシミリアンさま?」
「ああカトレア。彼女、中々面白い娘だね」
「……」
無言のカトレアはマクシミリアンの頬を抓った。
「イタタ、何をするんだカトレア!」
「わたし、こういう人の悪口を言いたくはないのですが、ツェルプストーに人には気をつけてくださいね?」
「ああ、ラ・ヴァリエールとツェルプストーの因縁は聞いているよ。けど良い機会だし、そろそろ和解をしても良いんじゃないかな」
「……マクシミリアンさま、気が付かないんですか?」
「なにがさ?」
「わたしは二つの家の因縁の事で怒っているんじゃありません」
「それじゃ、何で?」
「それは……」
カトレアは口ごもった。
感情の高ぶりの原因は軽い嫉妬なのだが、王宮ではほぼ全ての女性を無自覚に魅了する夫に、何時誰がマクシミリアンに言い寄って、閨を共にするのかヤキモキした事は一度や二度ではない。
マクシミリアンがキュルケに心を奪われるかもしれない、と心配になった。
マクシミリアンの愛情を疑った事はないが、やはり女として他の女が愛する夫に近づくのは気が気でない。愛情の証として子供が欲しいところなのだが、マクシミリアンとの間にまだ子供が授からない。
まだ焦る必要は無いが、少しづつカトレアに焦りが出始めていた。
「ともかくカトレア。ここでは人目につく。皆の所に戻ろうか、話しはそれからしよう」
「……分かりました」
少し拗ねた様子のカトレアは、先を行くマクシミリアンの後に続いた。
間もなくアルブレヒトの戴冠式が始まる。
既に瓦解を始めた帝政ゲルマニアを背負う野心家に多くの厄災が降りかかろうとしていた。
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