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領主は大変
第九章
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「あまり多くは出さない様にしよう」
「程々にですね」
「うん、ここはね」
 このことに用心してのことだった。教会のことも問題だった。
 その伯爵のところに遂にこの話が来た。
 領内を見回っている時に不意にお供をしている男爵に言われたのだ。
「イゾルデ様ですが」
「あの娘か。そうだな」
「はい、もうそろそろですが」
「年頃だね」
 伯爵もいい歳になっていた。十代で爵位を継いだが今は三十近い、先代が死んだ時代にはまだ乳飲み児だったイゾルデもだ。
「成長したね」
「では」
「そろそろ婚姻か」
「どなたにされますか」
「難しいところだね。ただ」
「ただ?」
「あの娘は信仰心が深いからね」
 伯爵が言うのはこのことだった。
「だから修道院に入ってシスターになりたいとか言いそうだね」
「そうされますか?」
「まさか」
 伯爵は男爵の今の言葉を退けた。即座にだった。
「修道院に入ったらそれこそね」
「シスターとなられて」
「一生結婚出来ないじゃないか」
 だからだというのだ。
「イゾルデにとってもよくないし」
「それにですね」
「折角の娘だ。嫁に出して」
「その家との結びつきを強める」
「そうしないとね」
 姉や他の弟妹達と同じくイゾルデにもそのカードになって欲しいというのだ。
「だからこそね」
「はい、それでは」
「どの家がいいかな」
 今回はというのだ。
「一体」
「丁度リューネブルグ伯爵のご嫡男が」
 男爵はすかさず言ってきた。
「如何でしょうか」
「そうだね。じゃあリューネブルグ伯爵と話をして」
「お決めになられますか」
「そうしよう。それにしても」
 伯爵は今は境を見回っていた。かつては見事なものだった堀や土塁も歳月が経ち崩れ埋まってきていた。それを見て難しい顔で言った。
「荒れてきたね」
「では修繕ですね」
「博士はカールの家庭教師で忙しいし」
「ではですね」
「うん、兵達にやらせよう」
 その修繕はというのだ。
「この堀と土塁がなければ異民族を防ぎにくいからね」
「砦よりも土塁ですから」
 異民族の馬を止める、その為のものだからだ。
 とりあえず守りを固めることにした。その間水車を増やし牛馬も増やした。そうしながらイゾルデの縁談を勧めていたが。
 当のイゾルデがこう言いだしたのだ。
「私はやはり修道院に入りたいです」
「入ってどうするつもりだ」
 伯爵は予想していたがそれでも怒って末妹に問うた。
「言え、何になるつもりだ」
「シスターになり神に仕えて行きたいのです」
 これまた彼の予想通りだった。
「ですからここは」
「駄目だ、もう話は決まったのだ」
 最初から許すつもりはなかったが伯爵は妹の退路をこの言葉で絶った。
「ならん、リ
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