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ロミオとジュリエット
第二幕その二

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第二幕その二

「悲しい恋だけしか知らないアルテミスに」
 アルテミスは処女神である。だから彼女の恋は悲しい恋にしかならないのだ。それが彼女の宿命なのである。月の女神としての。
「仰って下さい、ロミオ様」
 ジュリエットはロミオに対して言う。
「私を愛して下さいますと。私も今誓いました」
「では僕も誓います」
 ロミオもそれに応えて述べた。
「貴女だけを愛すると。アルテミスに」
「ロミオ様、それでは」
「ジュリエット」
 二人は見詰め合う。
「どうして私達は一緒になれないのでしょう」
「呪わしい束縛なぞなくなってしまえばいいのに」
 バルコニーの上下で見詰め合う。
「そうすれば私達は」
「永遠に・・・・・・あっ」
「どうなさいました?」
「人です」
 ロミオは述べた。
「人が来ました。申し訳ないですが」
「はい」
 ロミオは姿を隠した。
「暫しこれで」
「一体誰が」
 それはグレゴリオであった彼は従者達を連れ宮殿の中を見回っていたのだ。
「怪しい者はいないな」
「はい」
 従者達はそれに応えた。
「今のところは」
「そうか、それは何よりだ。だが気をつけるようにな」
 見れば彼等は武装していた。剣を腰に、槍を手に。そして松明を掲げて辺りを見回していた。
「モンタギューの者達は何処にいるかわからない。狡猾な奴等だ」
「皇帝に与しイタリアを売ろうとする売国奴共ですな」
「そうだ、教皇様に弓引いてな」
 彼等から見れば皇帝派はそうなる。モンタギュー家もキャブレット家をそう見ているのだが。
「不届き者達だ」
「全くです」
「ですから何をしてもおかしくはない」
「そうだ、鼠一匹も見逃すな」
 彼は険しい声で言う。
「わかったな」
「はい」
「それでは」
 彼等は去る。そして残ったのはジュリエットだけになった。
「ロミオ様」
 誰もいなくなったのを見計らってロミオを呼ぶ。
「おられますか?」
「はい」
 幸いに声がした。
「ここに」
「よかった。それで」
「ええ」
「私の名誉も貴方にお預け致します。そして信じて下さい」
「勿論です」
 姿をまた現わしたロミオはそれに応えた。

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